関係構築力を向上させるためには実践を繰り返すことが必要

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〝トランジション〟(11)-後継者の育成(2)〜関係構築力〜

「対話で変える!」第31回

長年、リーダーには戦略構築力やMBA保有者など個人的な経営能力が必要であると考えられてきました。ところが近年では、それらに加えて、自分自身をオープンにして周囲と対話を重ね、信頼関係を築いた上で組織全体を目標達成に向けて動かしていく能力が求められるようになってきました。

あるリサーチによると、トップ経営者が失敗する主因として、周囲との関係性を築けないことが挙げられています。いくら戦略やマーケティング、顧客開拓に優れていたとしても、経営幹部や部下と良好な関係を結べなければ、組織としてうまく機能しないのです。

こうした傾向や実態を踏まえ、企業の多くが、周囲と関係性を築き、戦略を迅速かつ組織的に実行していくことのできるリーダーを重視するようになってきています。つまり、関係構築力がリーダーシップや統率力のベースになるものとして認識されつつある、ということです。

ただ実際には、関係構築力を後継者に備えさせるのに、苦労しているケースが目立ちます。関係性とは「その人一人」で成り立つものではなく、相手と自分との間で創りあげていくものであることが、その一因として挙げられます。相手と言葉のキャッチボールをしながら、信頼や安心を培っていく必要があり、自分ひとりで分かったつもりになるだけでは、その能力を身に付けたとは言えないのです。

例えば、リーダーシップ研修などを受講させ、集中的に知識や理屈をインプットさせようとするケースでは、肝心なアウトプットが伴わず、実効が表れにくいという声を耳にします。

このように、関係構築力を向上させるためには、「相手」との実践を繰り返しながら、徐々に改善を試みる訓練が必要です。具体的には、コーチとの対話を通じて周囲一人ひとりに合わせた関係の築き方を学び、同時に周囲との対話を定期的、継続的に実践し、かつ、周囲やコーチからフィードバックを受けるというサイクル(学習→実践→フィードバック→学習)を回していくことが有効とされています。

皆さんの職場でも、後継者の育成として、こうした取組みを実施してみてはいかがでしょうか。

「COACH A」竹内 健【執筆者】
竹内 健(たけうち・たけし) エグゼクティブ・コーチ(COACH A USA 取締役 CFO)
PricewaterhouseCoopers LLPにて異例の日米5都市を異動しつつ、公認会計士として日米欧の企業や経営者を20年近くサポート。その経験を通じ、ソリューションの提供だけでなく対話を通じた人や組織への投資があってはじめてクライアントのパフォーマンスが継続的に発揮されることを痛感。これまた異例の会計士からの転身をはかり現職。

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