〝トランジション〟(7)関係性(Relational Intelligence)
「対話で変える!」第27回
COACH A竹内です。昨年年始にブラジルとメキシコに出張しました。
ブラジルでは、会社内のあちこちで社員同士が気軽におしゃべりし、明るい雰囲気を感じました。メキシコでは、職場やビジネスでも、“アミーゴ”、つまり友人(信頼)関係を結べるかどうかが重視されているようでした。
日本でも、職場での人間関係を円滑に保つため、同僚同士で飲みに出かけることがよくあります。職場での「良好な関係性」は国を問わず、職場に不可欠な要素です。
では、職場全体で「良好な関係」をつくるには、どのような視点が必要なのでしょうか。ある日系企業では、現地従業員の間で相互の関係性やチームワークに課題を抱えていました。
「上司のBさんは、まともな話ができず、彼の下で働くのは苦痛です」
現地の幹部社員たちは、不満や文句を社長のAさんにぶつける毎日で、組織として機能不全状態に陥っていました。
コーチを付けているAさんは当初、最も不満の対象となっているBさん一人にコーチをつけることを考えていました。しかし、コーチとの対話で、Bさんのリーダーシップや関係構築力は、「周囲との“関係性”の中でのみ開発される」ことに気づきました。なぜなら、リーダーは、部下や同僚に認められてはじめて、「リーダーになる」からです。
そこでAさんは、幹部全員を対象に、幹部同士、また、幹部と部下の間で定期的な対話の機会を設けるプロジェクトをスタートしました。
つまり、組織の中を「点」でなく、「面」でとらえ、組織全体の関係性の改善を目指すプロセスの中で、「真のリーダー」を開発することにしたのです。
その結果、幹部社員の自覚や主体性が高まり、組織全体のコミュニケーションが飛躍的に改善されました。会社の雰囲気もガラリと変わり、明らかに生産性が向上しました。
組織全体の“関係性”にフォーカスしたリーダー開発や組織風土変革が多くの企業で実現しつつあり、海外でも強い競争力を持った企業が誕生してきています。
【執筆者】
竹内 健(たけうち・たけし) エグゼクティブ・コーチ(COACH A USA 取締役 CFO)
PricewaterhouseCoopers LLPにて異例の日米5都市を異動しつつ、公認会計士として日米欧の企業や経営者を20年近くサポート。その経験を通じ、ソリューションの提供だけでなく対話を通じた人や組織への投資があってはじめてクライアントのパフォーマンスが継続的に発揮されることを痛感。これまた異例の会計士からの転身をはかり現職。