乳がんワクチンの今後(1)

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乳がんと戦う13

「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第144回

米国の女性間で最も多く診断されている乳がんについて、米国対がん協会(American cancer society)が挙げている明確な2つの種類の罹患リスク、変えられない要因と変えることができる要因のうち、変えることが出来るリスクについて、2024年からこの2年間に亘って説明してきた。変えられない要因について説明を開始する前に、去年25年に、乳がんのワクチンの臨床試験が目覚ましい進展を遂げたことを報告したい。

まず、米国でニュースとして大きく取り上げられたのは、25年秋のクリーブランドクリニックとアニクサ社共同による、特定の乳がんタイプを対象としたワクチン開発の臨床試験の有望な結果である。当ワクチンは、予防に使用されるのみでなく治療への応用が期待されている。

当ワクチンの構造は、通常、授乳中である母親の乳腺でしか作られないはずのタンパク質であるα─ラクトアルブミンが、授乳をしていない女性の乳腺に発現したα─ラクトアルブミンの異常発生を標的とし、ヒトα─ラクトアルブミンに対して免疫を与える、というものである。α─ラクトアルブミンは、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の多くの症例で発現が認められており、当ワクチンは、この領域における新たな予防戦略として位置づけられている。

TNBCとは、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、HER2の3つがすべて陰性のがんで、進行が早い。治療選択肢が限られていることから、当ワクチンは価値があり、当ワクチンの主な対象である。日本人女性のTNBCは約10~12%だが、若年発症・治療困難という特徴から、予防ワクチン研究の重要性は高い。これは米国においても同様である。

当ワクチンの第I相臨床試験では強い免疫応答結果が確認され、今後は第ⅡII相臨床試験への移行が計画されている。

(次回=3月7日号掲載=に続く)

【執筆者】清水直子しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。

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