乳がんワクチンの今後(2)

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乳がんと戦う14

「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第145回

米国の女性の間で最も多く診断されている乳がんについて、2年継続して連載している。最近では、乳がんに対するワクチンの臨床試験が進んでおり、明るい展望であることがメディアで多く取り上げられている。前回の文献では、2025年に話題になったトリプルネガティブ乳がん(TNBC)を対象としたワクチンの臨床試験の進展ついて報告した。このワクチンは、予防のみならず治療への応用も視野に入れて開発が進められている。

2025年は乳がんワクチンの臨床試験が多く実施されており、TNBCに対する予防と治療のためのワクチンの研究に加え、HER2陽性乳がんを標的とする治療ワクチンの研究が大規模に進んでいることが報告されている。HER2陽性とは、HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)というタンパク質が、がん細胞の表面に過剰に存在している状態を指す。HER2は細胞増殖のシグナルを受け取る受容体であり、これが過剰に存在すると、がん細胞の増殖が促進され、病勢が進行しやすくなる。HER2陽性がんとしては、乳がんが最も代表的で、乳がんの症例数中、1520%を占めるとされている。また、胃がんや食道胃接合部がんにも見られ、少数ではあるが卵巣がん、子宮体がん、大腸がん、膀胱がんなどでも確認されている。対乳がんとして、転移性HER2を対象とした標的ワクチンの臨床試験がワシントン大学で進められていることが発表されている。

乳がんワクチンの確立が容易でない理由は、従来のワクチンが、体内に本来存在しないウイルスや細菌などの異物に対し、体内が異物として認識して戦う仕組みであるのに対し、乳がん患者自身の乳がん細胞から発生することから、免疫システムが異物として認識せず、ワクチンの仕組みが使えないことにある。そのため、乳がんのワクチンは、異物でない、しかし、がん細胞に存在する標的とするなにかをみつけないといけない点にある。この長年の課題に対し、2025年から26年にかけて実施されている臨床試験が良い結果を出していることが、大きな期待を集めている背景にある。

 (次回=5月1日号=に続く)

【執筆者】清水直子しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。

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