乳がんと戦う7
閉経のためのホルモン治療も乳がん発生と関連性があるか?
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第138回
現在、米国の女性間で最も多く診断されている乳がんだが、以前のように乳がんの診断は最終宣告ではなくなってきている。現在、米国対がん協会(American cancer society)が挙げている明確な2つの種類の罹患リスク、変えられないリスク要因と変えることができるリスク要因のうち、2024年は変えることが出来るリスクをについて説明した。今回からは、証拠が確立していないが、よく語られる項目に検証したい。
肥満と運動不足が乳がん罹患とのリンクが明らかである中、食生活と環境に関する議論は活発に行われているものの明らかではないと同協会は伝えている。
〈高脂肪食〉
一部の研究によると高脂肪食と乳がん罹患リスクが示されている。また、総脂肪、多価不飽和脂肪(まぐろ、さば、鮭など)、飽和脂肪(ラード、バター、ココナッツミルク)が少ない食生活が一般的である国では、乳がんの症例が少ないという研究がある。しかし、この関連性はまだ確立されていない。
〈豊胸手術〉
豊胸手術は、乳がん罹患リスクとは関連がない、とされているが、乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)やその他のリンパ腫、扁平上皮がん等などのがんと関連性があるとされている。
〈大豆製品〉
日本を含むアジアでは、大豆製品が一般的な食事の環境で育ち生活しているが、これらの国の女性を対象とした研究によると、大豆製品を多く摂取する食生活は乳がんリスクを低下させる可能性があるとされている。しかし、大豆は、エストロゲンおよび抗エストロゲン効果について広く研究されている特殊な食品でもある。ハーバード大学の文献によると、このエストロゲン、及び、抗エストロゲン効果という矛盾した結果は研究方法の違いにあるという。大豆製品が乳がんに対して、そして、我々の体にどのような影響があるかを、特に我々日本人は納豆、豆腐、味噌、醤油を毎日食卓で愉しむこともあり、次回はどのような研究発表がなされているかを、乳がんの議論を越えてまとめたい。
(次回=3月1日号掲載=に続く)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。