乳がんと戦う8
~大豆製品について~
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第139回
現在、米国の女性間で最も多く診断されている乳がんだが、以前のように乳がんの診断は最終宣告ではなくなってきている。現在、米国対がん協会(American cancer society)が挙げている明確な2つの種類の罹患リスク、変えられない要因と変えることができる要因以外に、証拠が確立していないがよく語られる項目について前回=1月11日号掲載=から検証しているが、日本人が日常から主食の一つとして取り入れている大豆製品について議論がある。日本人の食生活で、味噌、醤油、納豆、豆腐など、切っても切れない食品である。今回は、大豆製品の議論についてまとめたい。
大豆製品は安全か?
前述したように(前回の文献)、日本を含むアジアの国の女性を対象とした研究によると、大豆製品を多く摂取する食生活は乳がんリスクを低下させる可能性があると発表されている。が、世界でも、日本でも、大豆の微量成分である大豆イソフラボンについて議論がある。大豆イソフラボンは特に大豆胚芽に多く含まれる成分で、エストロゲンと分子構造が似ているため、植物性エストロゲンと呼ばれ、また、エストロゲンに似た作用を生じることが分かっているためだ。厚生労働省も、当分野について、研究、調査を徹底的に行っており、乳がんを含む複数のがん予防が期待される反面、乳がん発症のリスクを高める可能性も考えられるとした上で、大豆イソフラボンに対する判断は確立していない、と説明し、結論的には、日本人が大豆製品を主食とした長い食の歴史からも問題視されたことはなく、一般的に大豆製品に注目した場合、健康に害はないという立場を取っている。
日本の長寿は世界2位
2023年の世界統計によると世界一の長寿国はモナコで89歳(女性)、84歳(男性)で、第2位は日本、韓国、香港・マカオの3国が続き、87歳(女性)、81歳(男性)である。モナコの長寿の理由は健康的な食生活(新鮮な魚、果物、野菜中心)と優良な医療システム、と言われているが、第2位に続く3カ国はアジアであり、日本人が大豆製品を歴史的に日常に食材に使用していることから、この長寿が多くを語っており、厚労省が発表している背景とも一致する。しかし、厚労省の調査は約20年前の06年で、その後、調査結果からの結論は世界でも確立していない。
(次回=5月3日号掲載=に続く)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。