妊活のとびら NY不妊治療ストリーズ 第17回
子供が生まれると、「パパ似かな〜」「目はママとそっくり!」と、両親のどちらにどこが似ているかを皆口々に吟味する。親から子に受け継がれるのは身体的特徴や性格、能力だけでない。将来の健康リスクとなる病気も、環境要因以外に親から子へと受け継がれるものがある。それが「遺伝子疾患」と呼ばれるものだ。
受け継がれる遺伝子疾患
人間の遺伝子疾患は、遺伝性のがんや糖尿病、嚢胞性線維症、血友病など難病指定となっている重篤なものまで現在約300種類ほど存在する。たいていの人はそのうち1〜2個を保有しているものだが、遺伝子疾患があるからといって必ずすぐにその病気が発症するわけではなく、一生発症しない人も多い。ただ、両親が共に同じ遺伝子疾患(単一遺伝子疾患)のキャリアの場合、それが子供に受け継がれる確率は25%。つまり、両親は健康だったとしても、子供は25%という高確率でその遺伝子疾患を患う可能性があるのだ。
妊娠前の遺伝子検査の重要性
多くは自分の子の遺伝子疾患の有無を知らずに妊娠・出産、そしていつか発症した時に「どうしてうちの子が…」という感情を抱く。だが今は、妊娠前の遺伝子検査によって、子供へ遺伝子疾患が受け継がれるのを阻止できる時代なのだ。
遺伝子検査の結果、もし両親が単一遺伝子疾患のキャリアであることが判明しても慌てることはない。まず遺伝子カウンセラーからその遺伝的リスク、そして体外受精(IVF)を経て受精卵(胚)の着床前遺伝子診断(PGT─M)を受けるかどうかの意思確認が行われる。重篤疾患ではなく、自然妊娠でも問題ないと判断されることがほとんどだが、そのようなリスクを理解したうえで、それでも生命をつくるかどうかという倫理的スクリーニングも同時に施される。
PGT─Mを受けなかったとしても、遺伝子疾患の事実を心に留め、生後定期的に精密検査を行うなどプロアクティブに対処することは、今後の子供の長い人生において大変有益なことで、疾患の発症を防ぐことも不可能ではない。
遺伝子疾患のない胚を選別
PGT─Mは体外受精後の胚の段階で実施し、単一遺伝子疾患を持つ胚か持たない胚かを識別することができる。そしてもしも単一遺伝子疾患を持つ胚が見つかったとしても、それ以外の遺伝子疾患のない健康な胚だけを子宮に移植するという画期的な取捨選択を可能にするための検査なのである。
名前は似ているが、PGT─A(着床前胚染色体異数性検査)とは異なるものなので混同しないようにしよう。PGT─Aとは胚の染色体数を調べる検査で、染色体異常を持つ胚を識別し、IVFを成功に導くために行われる着床前検査のことである。
遺伝子検査は将来への安心材料
PGT─Mは、99%を超える精度で単一遺伝子疾患を持つ胚、持たない胚を特定することができる。欧米ではすでに確率された医療とみなされている一方、日本では倫理的理由などから一般化には至っていない。
今自分たちは健康だからと過信せず、妊娠前にまず遺伝子検査を受けて両親となる自分たちの遺伝子疾患の有無を知っておく。それは大きな安心材料であり、そうすることで生まれてくる子供の遺伝子疾患を後世予防することができるのである。
(次回は8月第2週号掲載)
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