PRPは不妊治療の縁の下の力持ち

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妊活のとびら NY不妊治療ストリーズ 第5回

怪我をすると、しばらくして出血が止まって傷口がふさがり、やがてかさぶたとなって治癒する。この一連の過程で一翼を担っているのが、血中に含まれる「血小板」。そして、この血小板のはたらきに着目し、数年前から美容やスポーツ医学の分野、さらに不妊治療の分野でも取り入れられているのが、PRP(Platelet-Rich Plasma=多血小板血漿)療法である。自身の血液中の血小板に含まれる成長因子が持つ修復能力を治療し、人間に本来備わっている「治る力」を高めることで、さまざまな部分の治癒を促す再生医療だ。

卵巣を若返らせ、卵子数を増加

では、不妊治療において、PRP療法はどういった効果が期待されるのであろうか。

一つは、卵子数の増加。当コラムでも以前ご紹介したように、女性の卵子は胎児期に一生分作られ、その数は生まれる前をピークに徐々に減り続る。それゆえ、加齢とともに卵子数も質も低下し、不妊を招く原因となる。いくら薬で排卵を誘発しても、卵巣予備能(卵巣に残る卵子の残数)には個々の限度があり、FSH(卵胞刺激ホルモン)値が高かったり、AMH(アンチミューラリアンホルモン)値が低い場合、“ないもの(卵子)は出ない”というのが実状だった。

ところが、PRPを卵巣に注入することで、卵巣機能を若返らせ、卵子を包む卵胞の発育を促し、より多くの成熟卵子を作ることが可能に。卵子数が増えることにより、体外受精での採卵数、成功率、そして妊娠率が向上。高いFSH値や低いAMH値を知りつつも為す術がなかった方や、卵子数の問題で体外受精がうまくいかない方にとって大きな希望となる治療である。

また、40歳以下の早発閉経の方にもPRP療法は有効。卵巣機能が回復し、再び卵子を生み出す卵胞が発育するため、体外受精などによって、自身の卵子での妊娠が可能となるのである。

子宮内膜の厚みを増す

そしてもう一つ有効なのが、子宮内膜菲薄症に対する治療。「何度も流産を繰り返す」「良質な受精卵を数回移植したものの着床が続かない」など、心当たりのある方もいるのでは。これら反復着床不全の場合は、子宮内膜の薄さが原因の可能性がある。子宮内膜は受精卵が着床するベッドのような大切な役割を果たし、着床継続には一定の厚みが必要とされる。

これらの症状がある場合、子宮内にPRPを注入することで、血小板から産出される数種類の成長因子が子宮内膜における細胞を増殖、血管新生を促し、受精卵の着床率や妊娠継続が大いに期待できるのである。

効果が持続している間に体外受精を

治療方法はとてもシンプルで、腕から採血した血液を専用の遠心分離機にかけ、PRPだけを抽出。それを卵巣、もしくは子宮に注入する。自身の血液を用いた治療なので、アレルギー反応などの心配が少なく、安全性が高い。注入後、卵子が作られているか、もしくは子宮内膜に十分な厚みができたか確認して次のステップへと進む。PRPの効果は2カ月ほど持続し、体外受精などを試みる場合はその期間内に行うとよいだろう。

(次回は7月第2週号掲載)

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