代理出産38
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第110回
去年後半は、世界中で取り締まりが実施されている代理出産において、商業代理出産が合法とされていた数少ない国の一つであるロシアが2020年に勃発したコロナ禍により代理出産の事件や問題がクローズアップされ、ロシア政府が代理出産の取り締まりを開始後、議会にも代理出産禁止の法案が提出され、外国人依頼の禁止の法律成立も時間の問題であることをお伝えしてきました。
ロシアの代理出産は12年1月には法律上、連邦法にて代理出産が合法でしたが、近接国で同様に商業代理出産が合法であるウクライナやジョージアのほうが実は好まれていました。政治的な紛争もロシアを避ける理由の一つでしたが、代理出産業界関係者がロシアにおける代理出産プログラムの展開を控えた最も大きな要因は、ロシアの代理出産に関する法の問題です。それは、代理母が、出産した赤ちゃんの出生証明書に依頼者の名前を親として載せることに同意しなくてもよい、という弱点があるためでした。ロシアの弁護士はこのことについても、外国人依頼者がきちんと知らされずに代理出産エージェントから誤って導かれている、と指摘していました。つまり、出産後、代理母自身の子供とすることができ、依頼者に赤ちゃんを差し出さないといけないという強制力がないためです。また、ウクライナやジョージアよりも多少、依頼料金も高めであることも不人気の一つでした。しかし、世界中で代理出産が取り締まられるようになってから依頼可能な場所が数少なかったため、コロナ禍が発生する1~2年前からロシアも代理出産の依頼地の一つとして需要が高くなっていました。弊社のモスクワ駐在のロシア人パートナー、イバジェニア・イリーナ情報アナリストが、現在アクセスできるすべてのロシア語原文による文献、ニュースを網羅して分析した結果、外国人依頼による代理出産から出生する子供たちは、ロシア人女性が出産するにも拘わらず、結局、外国人になりロシア人にはならない、という事実も、根本的にプーチン大統領にとって問題であった、ということは以前にも説明した通りです。ロシアにとって、外国人による依頼の代理出産に利点はないためです。プーチン大統領の信念である父親と母親による伝統的な家族のありかたをおびやかす独身男性(同性愛主義)の人生を支持する代理出産、しかも、国籍もロシアにならない、というロシアの原理と主義を無視しているものなのです。この根本的な国の原則を基に、外国人依頼者によるロシアでの代理出産禁止の法律は成立を待つことになります。
(次回は2月第1週号掲載)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。