代理出産39
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第111回
コロナ禍以降の大きな変化としてロシアの外国人代理出産依頼が禁止される直前に来ているというロシアの状況を前回=1月8日号掲載=まで説明してきましたが、現在、世界で注目されて毎日ニュースになっているロシアとウクライナの関係の推移も、代理出産依頼を考える上で重要です。ソビエト連邦の崩壊により、ウクライナは1991年に独立宣言を行いました。しかし、プーチン大統領は歴史的に取り戻せないであろう事実を修正し直す必要がある、と考えているということで、両国間で緊張が続いています。
今後、ロシアとウクライナの状況により、プーチン大統領の考え方がウクライナの代理出産をも支配することになる可能性があるとしたら、現在は合法であるウクライナの代理出産についても影響があることを念頭におきながら決断する必要があります。現在、ロシアとウクライナの国境に10万のロシア軍隊が動員されています。ロシアとウクライナ間は、2014年以降、8年間戦々恐々の状況が続いていますが、政治的、及び、環境的に不安定なウクライナに代理出産を現在、依頼することもリスクがあると言えましょう。
ロシア国内では近年6年で政治的犯罪人とされるケースが8倍になっているという報告もあります。プーチン大統領は、彼の思想から逸脱する行為を行う者、ロシアのためにならない外的(外国)な要因は排除し、取り締まる方針であるため、以前に代理出産から赤ちゃんを授かった中国人の父親が赤ちゃんと出国時に逮捕されたケースについて書きましたが、この報告の傾向と一致するものです。
代理出産の依頼を考えるとき、代理出産の法律や方法を検証するだけではなく、それぞれの国の政治的な流れも読みながら決断する必要がある時代になってきました。
この3年2カ月、39回に亘って、代理出産医療コンサルタントである弊社にいただくお問い合わせ件数でトップ5に入る代理出産とその歴史について説明してきましたが、当シリーズも終結に近づいてきています。
(次回は3月第1週号掲載)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。