代理出産40
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第112回
この3年半近く、39回に亘って、代理出産医療コンサルタントである弊社にいただくお問い合わせ件数でトップ5に入る代理出産とその歴史について説明してきましたが、当シリーズも終結に近づいてきています。前回=2月5日号掲載=まで、ロシアで行われている代理出産がプーチン大統領の信念から乖離するため、ロシアにおける代理出産は終了に向かっていること、そして、先月、2022年2月初旬の時点でロシアとウクライナ間で政治的緊張が更に高まり、ロシアとウクライナの国境に10万のロシア軍隊が動員され、商業代理出産が合法であるウクライナでの代理出産依頼も、この両国の状況に依存してくることをお伝えしました。
まさしくこの原稿を書いている現在、プーチン大統領が、数日前まで軍事動員はトレーニングに過ぎずウクライナへ侵入することはないという公表していた内容とは裏腹に、突然のウクライナへの攻撃が開始され、キエフ市の破壊とロシアによる軍事侵攻状況がテレビの画面で流れています。
商業代理出産が合法であるウクライナでは、ウクライナ全土から代理母を募集します。通常、代理出産契約は、現在6代目の大統領であるウォロディミル・ゼレンスキー(Володимир Зеленський。19年就任)がロシアに対抗するために攻撃からも避難することなくメッセージを発信している大統領府が所在するキエフで行われています。契約後、代理母によっては10時間かけて電車で地元に戻り、移植の準備を行い、再度移植のために短期間キエフに移動し、妊娠期を地元で過ごし、出産の数週間前にキエフに準備のために移動し、キエフの出産病院にて出産する、という運びですが、22年2月26日現在、多くのキエフ住民は西部へ避難しており、クリニックも連絡が取れない状態です。弊社が代理出産弁護士2人に連絡を入れたところ、弁護士らはやはりの西に移動し避難している、ということが確認できました。現在、このような不安な状態であり、代理母らの安否が心配されます。また、キエフへの携帯、インターネット等は繋がる状況ですが、今後、襲撃があった場合、クリニック自体の安否や、保存されている受精卵などの標本の安全性も心配です。戦争下であることも含め、ロシアとの関係が明確にならない限り、ウクライナの代理出産を依頼できるような状態ではありません。次回、ウクライナの代理出産の現状況をウクライナ代理出産直接関係者から集め、リポートしたいと思います。
(次回は4月第1週号掲載)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。