代理出産44
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第116回
代理出産医療コンサルタントである弊社にいただくお問い合わせ件数でトップ5に入る代理出産とその歴史についての3年半近くに亘るシリーズも終盤を迎え、世界で数少ない代理出産の行き先であったロシアとウクライナが今年2月24日以降、未だに戦下にあり依頼が難しい中、ニューヨーク州が合法化したという最新状況を前回=6月4日号掲載=から説明開始しています。
ニューヨーク州では、2020年4月3日に児童と親の安全法(CPSA、The Child-Parent Security Act)が可決され、代理出産が合法化、21年2月15日に発効、商業的代理出産の道を開きました。世界どこでも、反論があるように、ニューヨーク州議会の有力な議員が代理出産と卵子提供に関し、強い反対を表明したため、各反対内容に対処するための関連条項が網羅されたことにより、ニューヨーク州の当法律の取り組みが功を奏するまでに10年かかりましたが、米国国内で最も包括的な子供と親を保護する代理出産法の一つになりました。内容は、詳細に規定されており、代理母になるための条件とともに、誰が依頼できるかも規制があるため、特に、米国での入国管理のステータス等に関して、日本人を含む外国人は気を付ける必要があります。
現在、州ごとに規制が違う米国では、代理出産に関して、三つのカテゴリーに分けることができます。代理出産に関して明確な法が確立していて、(1)禁止し、及び、もしくは、罰則を設けている州、(2)合法としている州、または、(3)当該法律を設けていない州、です。(1)と(3)に関しては、情報源によって誤った情報を発信しているため、情報が一貫しておらず注意が必要です。
ニューヨーク州の代理出産の合法化は、依頼者にとって、実質的に代理出産を利用できるようになった、という事実と同時に、規制と批判が優勢である現在の世界の代理出産の概念に、光を与えるものになったもの、と言えます。米国を代表する州の一つであるニューヨーク州が公に代理出産を肯定し、サポートしたことは、医療上の理由から代理出産を利用する以外に子供を授かれないグループにとっては含蓄ある重要な動きだったと言えましょう。
(次回は8月第1週号掲載)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。