代理出産57
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第129回
医療コンサルタントである弊社が2022年12月の日本講演を行った際に、複数の参加者の方から、法的に制限されている韓国での第三者介入の生殖医療の日本向けの広告、勧誘の合法性について質問があり、韓国における卵子提供、男女産み分け禁止と刑罰の法規を提示し説明してきています。
前回=7月1日号掲載=までのリポートでは、現在、韓国にて詐欺手法で困っていた日本人の方々からの救済依頼で、弊社が韓国の医療機関と関与して、そのやりとりの中で、韓国が非常に、まじめで保守的、そして、規則に沿って枠組みの中で動いている社会であることを説明しました。各大手病院はこの法を遵守しており、医療の仕組みを司っている権威(韓国政府)を尊重し、政府の取り締まりに対しても注意を払っていることが分かっています。通常、日本人の依頼者(患者)は韓国語が話せず、仲介である斡旋業者がすべてを取り仕切っており、問題の原点は、韓国の病院ではなく、斡旋業者にあることが分かっています。
韓国(首都ソウル)の各大手病院は、特別な海外からのケースに対し、定期的な会議で審議を行い、承認されない場合は治療を却下します。兵役制度がまだ存在し、多くの敬虔(けいけん)なキリスト教信者が多い韓国で、一般のソウル市民からの聞き込みを行ったところ、韓国の一般社会では、卵子提供が韓国社会的に許されないタブーであること、そして、最近のテレビドラマでも、未成年の学生の娘が悪徳業者から卵子ドナーの闇アルバイトの勧誘を受け、親の知らないところでこの違法の施術が行われているというテーマがあり、非常に心が痛い、という母親たちの声も多く聞きました。まさに、卵子提供(卵子ドナー)マーケットは韓国におけるブラックマーケットであることが韓国では誰でもが認識している常識であるそうです。
次回のリポートでは韓国の代理出産の非合法性について説明します。
(次回は9月第1週号掲載)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。