代理出産59
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第131回
医療コンサルタントである弊社に、法的に制限されているはずの韓国での第三者介入の生殖医療の日本向けの広告、勧誘の合法性についてのご質問から、韓国における卵子提供、男女産み分け禁止と刑罰の法規について説明してきました。前回=9月2日号掲載=から日本人がトラブルに巻き込まれていることが多く報告されている韓国での代理出産の非合法性について説明しています。
韓国では生命倫理、及び、安全に関する法律(略称:生命倫理法)で卵子提供、男女産み分け禁止と刑罰が明文化されている反面、無法の代理出産に関しては、実質的に、過去の代理出産に関わる韓国ソウル家庭裁判所にて2018年5月の判例で、代理出産は認められないと判決から韓国における代理出産は非合法であることを前回お伝えしましたが、実質的に、代理出産に関する法律がない、ということは、自由ではないのか、と解釈をする質問もあります。血統を大切にする伝統的な家族形成文化が確立している韓国は、生殖医療業界も同様に保守的であり、そして業界全体が大手クリニックのやり方に倣うという流儀があります。これらの主要大手クリニックに代理出産弁護団がインタビューしたところ、彼らは、韓国政府からの信頼を重視していることが分かります。代理出産の法律、基盤、方法論がないため、もし、行われるとしても、出産した女性が母親と定義されている韓国では、養子縁組を要しますが、法律がないことを利用した裏口の扉を作ることになること、そして、合法でない代理出産の過程の中で、何か問題が起きた場合は政府からライセンスを剥奪されることが現在合法でない代理出産を行わないのが背景の一つだそうです。
日本同様、韓国では1967年10月の最高裁判所の判例にて出産により法的親子関係が確立されると解釈されています。この解釈は、韓国ソウル家庭裁判所における2018年5月の代理出産関連の訴訟判例でも明言されています。当判例は、韓国人が米国で行った代理出産で、韓国人の依頼人は、子の親として認められない、という判決でした。つまり韓国では代理出産は認められない、と、確立したことになります。韓国の民法第103条では、善良な風俗その他社会秩序に違反した法律行為は無効とすると定義されていますが代理出産はこの条項に反するものとされました。
長く続きました日々積み重なる代理出産の歴史ですが、今回で終了とさせていただき、次回からは乳がんに関するシリーズを開始したいと思います。
(次回は2024年1月13日号掲載)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。