〈コラム〉気象災害よるオフィスクローズ(2)

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人手不足(35)

「HR人事マネジメント Q&A」第47回
HRMパートナーズ社 人事労務管理コンサルタント
社長 上田 宗朗

前回=3月22日号掲載=では「天候不良や災害によるオフィス臨時クローズ」について取り上げました。その前回は末尾にて、大抵は会社に備わっている筈の安全基準指南書や緊急事態マニュアルに常時目を通しておくことが如何に大切かを強調し、加えて出社停止の決定についても在宅勤務に切り替える判断についても必ずや会社側主導で判断するべきであり従業員側に委ねるべきではないと締めくくって筆を置きました。

この「会社側主導で判断するべき」は皆さんからすれば当り前のことのように思われるかもしれません。但し「在宅勤務ポリシー」を備えていないか或いは備えてはいるも「オフィス臨時クローズ」ポリシーと連動させていなければ天候不良に遭った日にルールに沿った判断ができず、その都度管理職者個人の判断に任せてしまうことになり、これが高じると判断基準からルールそれに人事管理上必須の「一貫性」すら失いかねません。そしてそれら希薄な判断の根拠に対していずれは従業員側からアンフェアあるいは差別だとクレームが入り、物々しい騒ぎにまで発展してしまう可能性も出てきます。

まだあります。在宅勤務に切り替える判断を従業員側に委ねてしまうなら、会社が定めた出社(通勤)ポリシーの崩壊を導いたり人事考課時のアテンダンス(出勤欠勤評価)の採点そのものにも影響を与えることになるでしょうし、それに加えて出勤の有無の確認も誰が何処にいるかも把握できずに人事管理の根幹を欠損させる可能性すらあります。

その他にも従業員タイプであるエグゼンプトとノンエグゼンプトの区分問題にも絡んできます。何故なら、専門職や管理職が属するエグゼンプト従業員区分とは異なり、就労時間数で賃金が計算されるノンエグゼンプト従業員だと、会社が出社停止を決定した日で尚且つ在宅勤務を認めないケースでは、各従業員の未使用有給休暇時間を強制的に充てるか否か、未使用のシックリーブ時間を本人希望で充てられるようにするか否か、についてのポリシーも予め定めておかねば従業員をしてオフィスクローズ時の混乱に拍車がかかるだけだからです。

オフィス臨時クローズと在宅勤務それぞれのポリシーに絡んではここに挙げた以上の周辺ポリシーにも波及する恐れがありますが、続きは次回に。

(次回は5月24日号掲載)

上田 宗朗

〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう  富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。

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