〈コラム〉雇用情勢と今後の勤務形態(6)

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人手不足(43)

「HR人事マネジメント Q&A」第54回
HRMパートナーズ社 人事労務管理コンサルタント
社長 上田 宗朗

皆さま、『ニューヨーク Biz』に月1回間隔で寄稿しております人事関連記事をいつもご覧いただき誠にありがとうございます。本年も引き続き何卒よろしくお願いします。

さて、米国労働統計局が発表した最新の雇用統計によると、昨年11月の失業率は4.6%、次いで12月2日までの1週間に新たに失業保険を申請した労働者は22万人に至り、最終的には12月の失業率は4.4%だったとのこと。これに続く本年1月10日までの週の新規失業保険申請件数は約19万8000件と出ており、全州からの報告を合わせると現在の失業者数は凡そ750万人とみられています。

過去22カ月間は高金利とインフレにもかかわらず失業率は3.4%から3.8%の間で推移し極めて低い水準を維持した由。従いこの直近12月の4.4%との数字は2010年代後半からのスパンでみれば比較的高い水準にあるものの歴史的視点で見れば依然として中程度~低い水準だと捉えられています。勿論このような見方もあるでしょうが我ら市井の民からすれば先行きの見通しに更なる不安を募らせる要因にしか映りません。何故なら今の状況は失業者や求職者が新たな職を見つけるのが益々困難になっている実態を裏付けているようにしか見えないからです。

前回の記事=2025年12月13日号掲載=でも取り上げた通り、昨年10月には過去20年で最大の人員削減数を記録したとの報告もありますし、過去30年間で若年層の就労人口増加が僅かだったのに対し、55~64歳と65歳以上の就労人口がほぼ倍増し、とりわけ65歳以上の就労人口が最も急速に増加している状況にあり、加えて65歳以上の就労者の60%が退職せずに今後も働き続ける予定であるかまたは約29%が一度はリタイアしたがその後に再就職しているとのことも勘案すれば、この先は雇用口が減っていくのは必定。別けてもAIや自動化技術の進歩の影響から有名企業の間で「永久解雇」という言葉すら聞こえるようになってきたのが何よりの証左でしょう。

この言葉、英語では「パーマネント・レイオフ」、即ち「永遠の一時帰休」を意味します。一般的に、大手製造業では季節毎の需給調整を行うべくレイオフつまり一時的に従業員を無給休職させ、その間の生活費を失業保険や休業手当で賄うよう強いるのですが、それが今回のレイオフは呼び戻さない前提の解雇の類だと騒がれ始めたわけです。

なぜ長年の雇用慣習であるレイオフ制度が今回ばかりは機能しないのか? それは企業の多くが過去数年の急成長に伴って増員してきたところに上述のAI勃興、リモートワークと柔軟な働き方の普及、高齢者層の継続就労、それに世界大戦の始まりの不安など、経済の不確実性や事業方針見直しを余儀なくされたことで多くの人員を削ぐ判断に致ったわけです。

(次回は2月28日号掲載)

上田 宗朗

〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう  富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。

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