〈コラム〉遺言書の定める遺言執行者

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補欠のオプションも必ず検討するべき

遺言書(Last Will and Testament)の中で、誰を遺言執行者(Executor)に指名するかを考えるとき、遺言者の死亡時に遺言者の財産管理を担う者として、多くの遺言者は生存配偶者、近しい家族、信頼できる友人、弁護士、又は信頼できる顧問等を選びます。いずれにしても遺言執行者は、遺言書の規定を執り行うため、遺言者が信頼している人物を選ぶべきです。さらに、故人の財産の取り扱いには非常に時間と手間がかかる可能性がありますので、これを引き受けるには、この作業をこなせる能力と責任感があり、かつ時間を割くことのできる人物でなくてはなりません。また、遺言の執行を頼みたい人物に、遺言者の死亡時に遺言を執行する意思と能力があるかを確認し、遺言書の中で遺言執行者として指名することへの同意を事前に得ておくのが賢明です。

しかしながら、ニューヨーク州は、まず遺言執行者としての資格には特定の制限を定めていることを知っておくことも大切です。例えば、遺言執行者は最低18歳でなければならず、重罪、資格はく奪、無資格等の判決を受けている場合は遺言執行者になることができません。さらに、ニューヨーク州の遺言検認裁判所(Surrogate’s Court)は、指名された遺言執行者が薬物乱用者である、信頼できない、不正直である、又は英語の読み書きができないと判じた場合には、行為無能として遺言執行者の資格を取り上げる場合があります。

もうひとつの重要な制限は、ニューヨーク州法は遺言執行者が米国市民(どの州に居住していても可)又はニューヨーク州に居住している非米国市民でなければならないと定めていることです。もし遺言書の中で指名された遺言執行者が上記のいずれでもない場合、ニューヨーク州の遺言検認裁判所は、市民又は居住者の要件を満たし、遺言執行者と共に受託者を務めることができる共同遺言執行者(Co-Executor)を指名することを求めます。上述のケースに当てはまる場合、遺言者はニューヨーク州法によって規定された市民又は居住者の要件を満たす共同遺言執行者を遺言書の中に指名することを検討するべきです。

また、遺言者は当初遺言書の中で指名した遺言執行人が、将来遺言執行者を務めることができなくなる又は務める意思がなくなる、さらに行為無能力や障害等の理由で遺言執行者としての資格を失うという可能性も考慮しておくべきです。また、指名した遺言執行者が市民又は居住者の規定を満たさなくなる等の可能性もあります。従って、遺言者は補欠遺言執行者を検討しておくことも重要です。

遺言書に載せる遺言執行者を選ぶときには考慮すべき点が数多くあります。しかし遺言者は、将来自分が死亡する時点で、第一候補の遺言執行者が務める能力や意思を失ったり資格を失ったりする可能性を考慮して、補欠のオプションも必ず検討するべきでしょう。

(弁護士 マリアン・ディクソン)

(次回は12月第1週号掲載)

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(お断り)本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は弁護士・法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。

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