NY州で事業資産を売却又は譲渡する場合(バルクセール)の注意事項

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売り手が消費税等をNY州へ納税していない場合の条項を盛り込むのがよい

通常の事業活動の枠外で事業資産の全部又は一部の売却又は譲渡をすることを「バルクセール」と言います。バルクセールで取り扱われる事業資産には、売り手の事業活動に直接関わる全ての資産が含まれます。事業資産には次のようなものが含まれますが、それに制限されません:(a)有形資産、例えば設備、在庫、家具、据え付け備品等(有形資産にはニューヨーク州の消費税が加算され、買い主に支払う義務があります)(b)無形資産、例えば事業の顧客リスト等(c)不動産の権利(d)その他全ての事業資産。バルクセール取引の例として、レストランや美容室が、家具、据え付け備品、設備、賃借権を、新たにレストランや美容室を開店する買い手に対してまとめて売却するケースが挙げられます。

買い手は、売り手が事業活動を行っている際に徴収する義務のある消費税等がニューヨーク州に支払いがされているかを確認する必要があります。例えば、クロージング(事業資産の引き渡しと売り手への支払いがされる日)の最低10日前に、買い手は「Notification of Sale, Transfer, or Assignment in Bulk(Form AU-196.10)(バルクセールの売り上げ・書換え・譲渡の通知書)」をNew York State Department of Taxation and Finance(ニューヨーク州課税財務部、通称“NYSDTF”)に提出しなければなりません。この書類には、売り手、買い手、バルクセール取引に関する情報が記載されます。このNYSDTFへの通知書はNYSDTFに定められた方法に従って提出する事が重要です。従わない場合は、通知書が無効になる恐れがあります。

NYSDTFは、通知書の受け取り後5日以内に、AU-197.1又はAU-196.2という書類を発行しなければなりません。AU-197.1は、売り手が全ての消費税を支払っており、監査や見直しが必要ないということを示します。一方、AU-196.2は、売り手がまだ消費税の支払い義務を負っており、見直しが予定されたり、現在監査が行われている、ということを示しています。もし買い手がNYSDTFからAU-197.1を受け取った場合、買い手は売り手が残した未納消費税等を支払う義務はありません。もし買い手がAU-196.2を受け取った場合、NYSDTFが納税完了通知書を発行するまでは、買い手は事業資産に対する支払いを完了するべきではありません。買い手が納税完了通知書を入手する前に事業資産の支払いを完了させてしまうと、売り手の未納消費税の支払い義務が買い手に掛かってくる恐れがあります。

このように、バルクセールでまとめて事業資産の購入を検討している方は、売買契約書に、売り手が消費税等をニューヨーク州へ納税していない場合についての条項を盛り込むのがよいでしょう。例えば、売り手のニューヨーク州への消費税の支払いについて、特定の日までに納税完了通知書が発行されない場合、買い手は契約から手を引くことができるという条項を盛り込むのが一般です。

(弁護士 マリアン・ディクソン)

(次回は11月第1週号掲載)

〈今週の執筆事務所〉

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(お断り)本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は弁護士・法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。

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