訴訟された場合、どのようなオプションがあるのか弁護士に相談を
ウェブサイトの問題に関する障害者差別を主張する訴訟が全米で増加しています。これらの訴訟は、視聴覚障害者がアクセスできないウェブサイトは複数の連邦法及び州法への違反になると主張しています。原告が訴訟に勝った場合、裁判所は法定損害賠償及び補償的損害賠償を裁定すると同時に、障害を持つ人々がアクセスできるようにウェブサイトのアップデートを命じる場合があります。
Americans with Disabilities Act(略称“ADA”)第三条及びニューヨーク州やその他の州法、現地法(総称“障害者権利法”)は、障害を持つ人々に対する差別を違法とし、差別を受けた者に私的訴訟を起こす権利を与えています。全国的に、ニューヨーク州人権法(略称“NYSHRL”)、カリフォルニア州のウンルー市民権法(略称“UCRA”)、ニューヨーク市人権法(略称“NYCHRL”)のような州法や現地法は類似した内容になっています。裁判所はこれらの法律を、補償的損害賠償及び法定損害賠償の条項を通じてADAと同等又はそれ以上の保護を与えるものとして解釈しています。
これらの法律に従う義務があるのは誰でしょうか。それは、“公共施設”を提供する全ての法人です。“公共施設”とは公共に対してサービスや物品を提供する、ウェブサイトを含む全ての設備のことです。このような法人には、公共が彼らの設備にアクセスできるように、合理的な措置を講ずることが求められます。物理的な設備の場合、車椅子に対応できるスロープやエレベーターが含まれます。ウェブサイトの場合、視聴覚障害者のアクセスが妨げられる可能性があれば、同様のルールがウェブサイト全ての部分に対して適用されます。法律はウェブサイトのアクセスのために、具体的にどのような改善が求められるのかは示していませんが、多くの裁判所はウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(Web Content Accessibility Guidelines、略称“WCAG”)を適用しています。
ADA第三条違反に対する私的訴訟での救済は、差し止めによる救済に限られています。通常、被告に対してこれ以上の差別を止めることを命令し、さらにウェブサイトのアクセスの改善を命令します。裁判所は、被告に対して原告の弁護士費用の支払いを義務付ける場合もあります。障害者権利法によっては、提供される救済の種類が異なります。例えばNYCHRLが補償的損害賠償(与えられた損害の程度に応じて算定された賠償額)を提供するのに対し、UCRAは法定損害賠償(制定法の範囲内で規定する)を提供します。小規模な組織及び企業に対する免除は一切ないため、ウェブサイトのアップデートにかかる費用、勝訴した原告側と弁護側双方の弁護士料、加えて少額の金銭的救済は、当事者にとって深刻な問題となります。従って、アクセス問題に積極的に対処することは、特にウェブサイトのアップデートが比較的安価にできる場合、明らかなインセンティブとなります。
ウェブサイトのアクセスに関する不安がある場合、WCAG基準に詳しいウェブデザイナーにウェブサイトの設計を依頼するのがよいでしょう。この費用は高額に感じられるかもしれませんが、弁護士料や訴訟にかかるかもしれない費用よりは少ないはずです。ウェブサイトのアクセスに関する訴訟をされた場合、どのようなオプションがあるのか弁護士に相談することをお勧めします。
(弁護士 マシュー・プレソー)
(次回は1月14日号掲載)
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