法人設立前の契約は署名者にとって多くのリスクが伴なう
法人設立前の契約は、未設立の法人の代わりに意図的に署名された契約のことを言います。
時には期限厳守の理由で、法人を直後又は同時に設立することを目的とし、在庫、ベンダーとの取引、又はオフィスやリテールスペースの確保をするために、法人設立が完了される前に契約書に署名がなされる場合があります。
しかし、この種の契約書には、署名者にとって多くのリスクが伴います。契約締結時に法人が実在しないため、契約そのものに効力を持たない、そして契約書は法人に対して法的強制力を持たない可能性があります。
通常、法人設立完了後、法人は契約に同意し、守ることにより、契約書に基づく権利、義務、責任を受け継ぐことが見込まれます。しかしながら、前述の場合、元の契約書の代わりに法人と第三者との新しい契約書に置き換えられた当事者交替契約書がない限り、法人が責任を負うことに加え、個人の署名者も引き続き契約書に基づいた責任を負います。
何らかの理由で法人が設立されなかった場合、または法人が当事者交替契約書を通じて契約を引き継がなかった場合は、法人の代理人として契約書に署名をした者は個人的な責任を負い、契約書に拘束される可能性があります。これは代理法上(agency law)、実在しない法人の代理人としての役割を果たしている署名者は、実際には、契約に反対の趣旨がない限り、自分の責任で署名をしているということになるからです。従って、法人の代理として契約書に署名をする前に、個人責任を負わないことを確証したい場合、法人化された企業の存在を確認し、当事者交替契約書を締結するのが良いでしょう。
(弁護士 マリアン・ディクソン)
(次回は4月1日号掲載)
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