一般的に店舗やレストランがアクセス不能で訴訟を起こされた場合テナントの責任となる
ニューヨーク市は、57丁目に聳え立つ真新しいタワーからロウアーマンハッタンにある合衆国建国前から建っているタウンハウスまで、様々な様式の建物があるので有名です。スペースは貴重で、地上1階部分のスペースはほとんど店舗かレストランで占められています。ニューヨークはまた、多様な人々がいることでも有名です。世界中から集まってくる異なる人種、性別、性的指向、違う信念や宗教を持つ人々が近くに住み、私たちはどこにいても誰もが歓迎されるよう努めています。これは、視覚障害者、聴覚障者、車椅子に乗っている人などの障害のある人々にも当てはまります。1990年代以降に建てられた建物は、車椅子を使う人々を含む障害者のアクセスが可能ですが、それよりも古い建物は、アクセス不可能な場合がしばしばあります。
古い建物でも、改修によって障害者がアクセス可能になる場合もあります。例えば多くの古い建物には1階に店舗やレストランが入っていて、サイドウオークよりも1、2段高くなっていることがあります。このような場合、店舗やレストランはスロープを設けることが義務付けられます。しかしながら、店舗やレストランによってはADA(Americans with Disabilities Act─障害をもつアメリカ人法(連邦法))の基準を完全に満たした改修を行うことができない場合があります。古い建物の、バスルームが地下にある店舗やレストランを考えてみて下さい。このような建物にはエレベーターがなく、バスルームを地上階に移すことは一般的に実現不可能です。このような場合、店舗やレストランが車椅子利用者に対するバスルーム提供を免除されることはなく、代わりの措置を講じることが義務付けられます。一般的な解決策としては、店舗やレストランが近隣の建物にあるバスルームへのアクセスを可能にするという方法があります。
これらの法律は、米連邦検事事務所(US Attorney’s Office)や州や市の人権委員会(Human Rights Commission)のような公的機関によって施行される場合もありますし、私人によって施行される場合もあります。店舗やレストランが米連邦検事事務所に訴えられた場合、障害者のアクセスを可能にする改修と、連邦法に従った罰金支払いが命じられます。私人に訴えられた場合、損失ははるかに大きくなります。勝訴した原告は補償的賠償、懲罰的損害賠償、弁護士費用を請求できるようになります。このような訴訟に負けることは、大きな経済的損失の可能性があるため、一般的に店舗やレストランは改修と和解交渉を行います。このような障害者差別を訴える訴訟は非常に多く、避けることはできません。
店舗やレストランの所有者は、スペースを賃貸する前に、まず障害者のアクセシビリティを考慮するべきです。賃貸スペースにアクセシビリティの問題がある場合、リース交渉をする際に考慮する必要があります。家主がADAの規定に従って必要な改修を行うことに同意することもありますが、一般的に店舗やレストランがアクセス不能で訴訟を起こされた場合、テナントの責任となります。店舗やレストランがアクセスに関する苦情通知を受けた場合、直ちに弁護士に相談し最善の対策を決定すべきです。
(弁護士 マシュー・プレソー)
(次回は9月2日号掲載)
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