遅延が必ず起こるであろうことを認識しておくべき
商業リースの開始時、家主はテナント予定者に対して“フリー”固定賃料期間をインセンティブとして提供することに同意することがよくあります。“フリー”固定賃料の目的は、テナントがビジネス開業する前に、商業スペースを改築するための計画、設計、工事に必要な時間を提供することにあります。しかし、テナント予定者は往々にして、計画、設計、工事に実際にかかる時間を少なく見積もってしまいます。これは特に歴史的価値を持つランドマーク指定の建物の中にある商業スペースの場合によくあります。工期の遅れはテナントに対する“フリー”固定賃料期間の損失日数になります。もしテナントが“フリー”固定賃料期間が終了するまでにビジネスを開業するための周到な工事の準備をしていないと、ビジネスが開業する前から家賃が発生することになります。商業スペースの工事のためには、テナントは設計士、技師、コントラクター、デザイナー等のサービスが恐らく必要となりますので、テナントは可能な限り早い段階、できれば商業スペース物件を探している時点から、これらの専門家への相談を始めるのが良いでしょう。この過程に専門家を噛ませると、物件の状態に問題のある場合、賃貸借規定の交渉に役立てることができます。できれば、テナントが工事許可証を迅速に取得できるよう、家主が承認したプランを賃貸借契約書に添付し、リース開始と同時に着工できるのが理想的です。
家主が承認するプランをニューヨーク市の建築部へ提出後、工事許可証が発行されるまでには数週間、場合によっては更に長くかかります。一旦全ての工事許可を得た後、工事が始まると今までは見えていなかった現場の問題が出現し、対策に追われることもよくあります。また、様々な理由により、工期がコントラクターの最初に見積もった時間より相当長くかかることも多いのです。
“フリー”固定賃料を家主と交渉するとき、テナント予定者は見えている部分、見えていない部分を含めて遅延が必ず起こるであろうことを認識しておくべきでしょう。また、ビジネスの開業よりも前に固定賃料の支払いが始まる可能性があることを覚悟しておくべきです。このように、工期の遅れによって予定していたビジネス開業日が遅れることがあるため、テナント予定者は緩和策として、必ず家主と“フリー”固定賃料期間を設けるための交渉をすることをお勧め致します。
(弁護士 マリアン・ディクソン)
(お断り)本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は弁護士・法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。
〈今週の執筆事務所〉Miki Dixon & Presseau 法律事務所
122 East 42nd Street, Suite 2515 NY, NY 10168
Tel:212-661-1010
Web:www.mdp-law.com