〈コラム〉先取特権とは何か─Part 1

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労働者や資材供給者が不動産に対する請求権を他者に通知できる

不動産はニューヨーク市における最大の経済セクターの一つで、何十万人もの人々が、建物・住居・オフィス・店舗などの工事やメンテナンスのために雇用されています。他産業と変わらず、この業界でも支払いを巡る論争は常に起こっています。時によっては不動産所有者が、労働やサービスの質が低いことを理由に、労働者への支払いを拒絶することがあります。所有者が資金不足に陥ることもありますが、非良心的な所有者が単純に請負業者や資材供給者に支払いをせず、業者が交渉に疲れて支払いの受け取りを諦めたり少ない金額に応じるという例も見られます。不動産所有者と労働者の関係を見ると、彼らの経済力と交渉力は、片や億万長者、片や零細の労働者や製造業者など、著しく対照的になることがあります。

ニューヨーク州は、労働者や資材供給者が一般的に不動産所有者よりも弱い立場にあることを認め、労働者や資材供給者が不動産に対する先取特権を申請できる法律を制定しています。先取特権は職工留置権とも呼ばれ、不動産の改良工事の労働及び/又は供給された資材に対する権利請求がこの書類によって公示されます。このような先取特権は不動産の所有権にも影響を与え、先取特権が解除されるまでは物件の売却はできません。極端な例になると、先取特権者が支払いを受けるために、裁判によって不動産が売却されることもあります。

不動産の構築に組み込まれた資材、労働、サービスを提供した場合、先取特権を申請することができます。不動産が所在する州内のカウンティの書記官の事務所に行き、先取特権通知を提出すると先取特権を取得することができます。この通知には、先取特権を申請する人の基本情報、提供された労働や資材の内容説明、不動産の所有者、先取特権の対象となる不動産、その他詳細を記す必要があります。先取特権は、労働や資材が供給されている期間、又は、労働が終了してから一戸建て住の場合は4カ月以内、その他のタイプの不動産の場合は8カ月以内に申請しなければなりません。先取特権の有効期間は1年間ですが、延長することができます。申請後、不動産の所有者や責任者に先取特権の通知が配達されなければなりません。

先取特権は申請した者が支払いを受ける権利を自動的に与えるものではありません。ただ単に不動産に対する請求権を他者に通知するだけです。支払いを受ける権利を証明するためには、先取特権者が裁判を起こさなければならない場合もあります。しかしながら、先取特権は請求権を確実にするものであり、先取特権者が支払いを受けるチャンスは向上します。事実上、先取特権は労働者や資材供給者が不動産所有者と交渉するときに活用でき、両当事者が合意するチャンスも向上させることができます。

(次回=9月第1週号掲載=に続く)
(弁護士 マシュー・プレソー)
(お断り)本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は弁護士・法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。

〈今週の執筆事務所〉Miki Dixon & Presseau 法律事務所
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