〈コラム〉インフレと利上げ

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Nagano Morita a Division of Prager Metis 日下武「ビジネスのツボ」 第121回

最近、FRBの利上げのタイミングや利上げ率に関するニュースをよくみます。そのせいもあってか、FRBの金融政策の影響についての質問をよく受けるようになりました。

FRBとは全米にある12の連邦準備銀行を統括している機関で、FRBが米国の金融政策の決定権を持っています。金融政策で金利を上げることを利上げといいますが、なぜ今、利上げをしようとしているのでしょうか。それは、現在アメリカで起きている高いインフレと関係しています。

インフレはモノやサービスに対する需要が供給を上回る場合に起きます。パンデミックにより一時期は景気が悪くなりましたが、現在ではワクチンが普及しはじめ、外出する人も増えてきました。パンデミック禍でアメリカ政府は現金給付によって購買力を高めようとしたり、FRBは政策金利をゼロに下げ、量的緩和政策で市場にはお金があふれる状況になりました。

需要サイドの消費者がお金を持つ一方で、供給サイドはうまく回っていません。最大の問題は人手不足です。工場や港、トラック運送会社や倉庫で働く人が集まらないため、サプライチェーンが途切れ、生産や出荷が遅れてしまい、グロッサリーは在庫切れで棚が空っぽになっているのをよくみます。この間もグロッサリーに行ったら、棚がガラガラになっており、商品が戻ってきたと思ったら、かなりの値上げをしていました。私個人の印象では生活費がパンデミック前の1.5倍くらいまで上がっている気がします。給与が上がらなければ、いつも買えていたものが買えないので、給与交渉をする人も増えているようです。人手不足ということもあり、いろいろな企業が高い給与水準で人を募集しているので、そういった高い給与を求めて自主退社する率が過去最高になっているとも聞きます。

ただし高い給与を支払う企業はそのコストを製品やサービスに上乗せするので、また物価が上昇します。そして、物価が上昇すると人々は高い賃金を交渉します。こういった賃金と物価のスパイラルはとても危険なインフレを起こす危険があるといえます。

インフレを抑制するための政策として利上げがあります。利上げによって銀行の借入コストを上げることで、消費や投資を行う際のコストを高め意図的に経済を冷え込ます効果があるといわれています。ただ、急激に利上げをおこなうと世界の金融市場に不安を与え、世界恐慌を起こす可能性もあります。市場に不安を与えない程度に段階的に予測可能な政策を進めることが大切になります。

(次回は4月第2週号掲載)

〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) Prager Metis CPAs Boston/NJ マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。

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