「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第68回
マンハッタンでビジネスをしている方は特に感じていると思いますが、最低賃金が毎年どんどん上がっています。
ニューヨーク市では従業員数が大きい、小さい(10人以下)の会社でタイミングは違うものの、2019年には15ドル(チップを受け取る従業員は10ドル)まで上がることが決まっているようです。2021年からさらに上昇する可能性が高いようです。
飲食業を経営する上で大きな経費というと材料費、人件費、そして家賃になります。この3つのコストを考えながら経営すると利益の計算がしやすくなり、目標が立てやすくなります。具体的にはどういう形で目標を立てるかというと、売上高との比率で考えていきます。
日本では一般的に材料費と人件費の合計比率が売上高の55%以下に抑えられたら理想だと考えらているようです。そして、家賃は10%以下といわれています。材料費と人件費はどうして合計で考えるかというと業態によって変わってくるからです。
例えば、流れ作業のようにあまり技術を使わないところは、手を加えないでも良い商品を扱うため、材料費が高くなり、その代わり技術が要らないので人件費が抑えられる傾向にあります。逆に高い技術を持つ寿司屋さんなどは人件費が高くなりますが、その分、職人さんが材料に付加価値をつけるので、経費の比率が逆転します。
10年ほど前に日本からマンハッタンに進出してきた飲食業の経営者に聞くと進出してきた当初はマンハッタンの家賃の高さに驚いたといいます。自分が思っていた事業計画の売上高に対して家賃が15%ほどになり、諦めようと思いましたが、思い切って挑戦した結果、人件費の面でチップという習慣に助けられ、結局利益を出すことができていたようです。ただ、最近の最低賃金の上昇でそのメリットもなくなり、かなり厳しい状況になったと聞きました。
経営者によっては、売上高比率という考え方にこだわり、どうにか今の売上高比率で人件費を抑えようと人員をカットしたり、ベテランをやめさせて、安い初心者に雇いなおしたりしている方もいるらしいです。そういうお店は、サービスが悪くなり、逆にお客さんの足が遠のいていきます。反対に、良い人材を集めるために人件費予算を上げて、福利厚生に力を入れているところは、サービスが上がり、従業員満足度も上がって、人件費を増やした以上に売上が倍増して、成功している例もあります。私は後者をお勧めします。皆さんの成功を祈ります。
(次回は11月第2週号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。
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