「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第73回
Netflixという会社のメンバーシップに加入しているので映画やテレビ番組をオンラインでストリーミングできるのですが、最近はアメリカの番組だけではなく、韓国や日本など海外の番組もリストに上がります。私は日本の伝統を感じる食品、工芸品にとても興味があるので、日本の伝統を扱っているものはないかと探したところ『和風総本家』という番組を見つけました。アメリカに20年ほど住んでいますが、美しい日本の文化に触れると日本が恋しくなります。お寿司からお神輿まで、いろいろな伝統を紹介していますが、素晴らしいものばかりです。自分が日本人ということに誇りを感じます。ただ、現在の伝統職人の問題は後継ぎにありそうです。違う番組でも林業を支える木を切るためのなたを作る職人を取り上げていましたが、やはり、後継ぎがいないことが問題となっていました。ただ、番組では30代の男性が転職してきて80代の熟練職人から厳しい修行を受け、3年目でやっと1本のなたを始めから最後まで作らせてもらうというものでした。1週間かけて1本のなたを作り、美しい刃のついた作品でした。しばらくするとお客さんが現れ、何万円で売れるのかなと興味津々でした。
アメリカのWilliams sonomaというハイエンドのキッチン用品店にいくと和包丁が販売されています。300ドル程度のものが人気があると聞いたことがありました。その話も踏まえて観ていましたが、結果は5000円でした。1週間かけて製作した美しい作品が5000円。多分、職人の世界では素晴らしい製品を作るということに集中して、お金のことは二の次になっているのかもしれません。日本はデフレでものの価格が安くなっていると聞きます。ただ、伝統職人がこのデフレの波にかかり、生きていけなければ日本の伝統がなくなります。
アメリカのハイエンドキッチン店では和包丁が高額で取引されています。商売の上手な人はこの価格差に目をつけて、日本で職人さんたちに安く作らせてアメリカで高く販売して、大きな利益を上げるかもしれません。これを業界ではアービトラージといいます。ただ、この利益を職人さんたちに還元しないと日本の伝統工芸は習得するのは厳しく難しいのに、儲からない職業として後継ぎが続かず、日本の伝統的な製品がどんどんなくなっていく気がします。日本の伝統を残すためにも、日本の伝統を継承する職人さんや企業に利益の還元、補助が必要な時代だと思います。
(次回は4月第2週号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。
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