永野・森田公認会計士事務所 日下武「ビジネスのツボ」 第91回
最近、ドナルド・トランプ大統領が連邦準備制度理事会(FRB)に利下げの圧力をかけているというニュースをよく見ます。そのせいもあってか、FRBの金融政策の影響についての質問をよく受けるようになりました。今回は金融政策についてのお話をしようと思います。
FRBとは全米にある12の連邦準備銀行を統括している機関で、FRBが米国の金融政策の決定権を持っています。金融政策で金利を下げることを利下げといいますが、利下げをすると何が起きるのでしょうか。
米国ではリーマンショック以降利下げをしました。利下げをすることにより銀行などの金融機関は低い金利で資金を調達できるので、個人や企業への貸出も低い金利で行うことができます。低金利でお金が借りられる機会がくると「ローンを組んでも良いチャンス!」ということで買い物をする人が増えます。
例えば、個人は車や家など、そして企業は設備投資や機械などをお金を借りてでも高いモノを買うことが増えます。車や家、設備、機械などが売れることによりメーカーや販売会社は儲かり、従業員のボーナスも出るでしょう。従業員は多くお金を貰うことにより、今までよりモノを買いやすくなります。このようにお金を借りやすくすることにより、経済活動が活発になることで景気をよくすることや株価を上げることが期待されます。
市場にお金を供給したりお金が回りやすくする金融政策を金融緩和政策と呼びます。景気がよくなるのであれば、利下げばかりしていたらいいのにと思う人もいるかもしれません。でもそんな簡単な話ではないのです。FRBはなぜ利上げをしたいのでしょうか。
リーマンショック後に利下げと追加緩和によって、市場に米ドルを大量に供給した結果、米国内の景気は徐々に回復してきましたが、過度な米ドル安を招くこととなり、米ドルの価値を弱める結果となりました。
米ドル安が続くと将来的には貨幣価値が下がり米国内でインフレを引き起こしてしまいます。そこでFRBは利上げをすることにより、米ドルの価値を徐々に上げていく金融政策を進めてきました。利上げをすると世界の市場参加者は金利の高い通貨で運用したいと思うので、米国債券への投資に人気が出てくるので米ドルの価値が上がります。ただし、株式市場から債券市場にお金が流れるため、株価は下がります。
一方、トランプ大統領にとっては国民たちにお金が入り、株価が上がったほうが短期的に結果を見せられるので、利下げがしたいところです。
これから金利に関するニュースの見方が変わるのではないでしょうか。
(次回は10月第2週号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。
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