永野・森田公認会計士事務所 日下武「ビジネスのツボ」 第96回
たくさんの日本の企業が米国に進出してきています。日本食ブームが長く続く中、日本で成功している飲食企業の進出も多く、どんどん日本食のレベルが上がってきています。
一方で日本の飲食企業以外が、既にアメリカで成功している飲食企業を買収するということも多くなってきました。そのような企業は、日本のビジネスは今のところ好調なのですが、この先、日本の少子高齢化問題などを考えると日本のビジネスだけでは将来の見通しが立たなくなってきており、世界を見てみると日本食ブームで大きく利益を上げている飲食企業が目立つということで、M&A(Mergers and Acquisitions)という経営戦略が行われるようになってきているようです。
ニューヨークは日本食ブームが続いていて、日本食が受け入れやすく外食する富裕層も多いとはいえ、レベルの高いフレンチやイタリアンなど他国のレストランも多く、競争が激しいところです。
飲食業経営を続けていくのはかなりのアイデアとノウハウが必要ですが、最低賃金や家賃の上昇からコストが増えている上に、就労ビザが取りにくくなっており、人材の確保も難しくなっています。
このような状況下で、飲食業を経験したことがない日本の企業が新事業展開を目指してニューヨークにスクラッチから飲食事業に挑戦するのは、泳げない人がナイアガラの滝に細い輪ゴムでバンジージャンプするほど生き残ることが難しいかもしれません。
そこで、すでに米国で飲食事業に成功している企業を買収することで、素早くその事業のノウハウを自社に取り組むことができます。人材などもそのまま雇用することができれば、スムーズなオペレーションもできます。
M&Aの対象となる人気の企業はしっかりとしたブランディングとオペレーションが確立されていることです。経営者が変わっても、ブランドと品質が変わらなければ、現状のお客さんは確保できます。
本来の力を発揮できていなさそうな企業もM&Aのターゲットとしては人気があります。そういうケースは以前、繁忙期に大きな工場や機械を買ったのですが現在はそこまで忙しくなく、スペースや機械を持て余しているような企業です。
新しい企画やアイデア次第でその資産を生かすことができるのであれば、既存のビジネスを買収する以上の効果が生まれます。買収する企業を選ぶにあたり、1+1=2を考えるのでなく2以上に効果を上げられるということがM&Aの企業選びのポイントになると思います。
(次回は3月第2週号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。
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