情報教育や外国語教育の充実、伝統文化教育、道徳教育や体験活動も重視
「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
改訂学習指導要領が、幼稚園では2018年度から施行されています。また、小学校では2020年度から、中学校では2021年度から、高等学校では2022年度から施行されます。すべての教育課程において、知識の理解の質を高め資質・能力を育む「主体的・対話的で深い学び」の実現を目標としています。そのために、「何ができるようになるか」を明確化し、各教科等の目標及び内容を、(1)知識及び技能、(2)思考力、判断力、表現力等、(3)学びに向かう力、人間性の三つの柱で整理しています。また、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うとしています。
これにより、日本の学校教育事情は、大きく様変わりすると思われます。まず、各教育課程別に、どのような改善がなされるかをご説明します。
幼児期の終わりまでの育ってほしい姿を明確にした幼稚園
幼稚園では、幼稚園教育において育みたい資質・能力(「知識及び技能の基礎」、「思考力、判断力、表現力等の基礎」、「学びに向かう力、人間性等」)を明確化しています。また、幼児期の終わりまでに育ってほしい具体的な姿を「健康な心と体」「自立心」「協同性」「道徳性・規範意識の芽生え」「社会生活との関わり」「思考力の芽生え」「自然との関わり・生命尊重」「数量や図形、標識や文字への関心・感覚」「言葉による伝え合い」「豊かな感性と表現」のように明確にしています。そして、我が国や地域社会における様々な文化や伝統に親しむことなど、教育内容の充実を図っています。
このように、幼稚園は、小学校進学後の教育目標達成を意識した教育内容となっています。
コンピュータや外国語教育などの充実が図られる小学校
小・中学校では、主に以下の6点が改善されています。
(1)言語能力の確実な育成
発達段階に応じた。語彙の確実な習得、意見と根拠、具体と抽象を押さえて考えるなど情報を成果的に理解し適切に表現する力の育成が図られます。また、各教科等における言語活動(実験レポートの作成、立場や根拠を明確にして議論すること)が充実します。
(2)情報活用能力の育成
小学校で、コンピュータでの文字入力等の習得、プログラミング的思考のための学習活動が実施されます。
(3)理数教育の充実
日常生活等から問題点を見出す活動や見通しを持った観察・実験などが充実します。また、必要なデータを収集・分析し、その傾向を踏まえて課題を解決するための統計教育や災害に関する内容が充実します。
(4)伝統や文化に関する教育の充実
古典など我が国の言語文化や、県内の主な文化財や年中行事の理解、我が国や郷土の音楽、和楽器、武道、和食や和服などの指導が充実します。
(5)体験活動の充実
生命の有限性や自然の大切さ、挑戦や他者との協働の重要性を実感するため、体験活動を充実させ、自然の中での集宿泊体験活動や職場体験が重視されます。
(6)外国語教育の充実
小学校中学年で「外国語活動」が、高学年で「外国語科」が導入されます。
以上の6点に加え、「道徳科」を特別の教科として位置付け、発達の段階に応じ、答えが一つではない課題を一人ひとりの児童生徒が道徳的な問題と捉え向き合う「考える道徳」、「議論する道徳」への転換を図っています。いじめ問題への対応の充実や発達の段階をより一層踏まえた体系的なものに見直すとともに、問題解決的な学習や体験的な学習などを取り入れ、授業方法の工夫をすることを示しています。
このように、小中学校は、情報教育や外国語教育の充実に加え、伝統文化教育、道徳教育も重視し、体験活動にも力を入れる教育内容となっています。
次回は、高等学校の改善点と、大学入試に与える影響について、ご説明します。
(写真:名古屋国際中学校・高等学校)
【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校・学習塾講師を歴任。現在は、「米日教育交流協議会(UJEEC)」の代表として、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学の北米担当などを務める。他にデトロイト補習授業校講師(教務主任兼進路指導担当)
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