大学入学共通テスト導入で変化する学習方法

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授業を聞いて覚えるだけでなく、積極的に参加することが大切

「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人


大学入試センター試験に代わり、新たに導入された大学入学共通テストが実施されました。共通テストはセンター試験とは異なり、思考力、判断力を発揮して解くことが求められる問題が重視され、身につけた基本的な知識や解法、公式の使い方などを十分に理解した上で、それを様々な場面で実践的に活用できるかを問う出題傾向となっています。共通テストは、帰国生大学入試を受験する生徒は受験する必要がありませんが、帰国して日本の中学校や高等学校で学び、国内生と同じ一般入試で国公立大を目指す場合には必要になります。また、私立大でも共通テストを利用する入試を実施する大学もあります。ここでは、共通テストの出題傾向を鑑み、中学校や高等学校でどのような姿勢で学習すればよいかをご説明します。

共通テストでは、すべての科目において資料、グラフ、地図、写真、文章など、読み取る資料の量が増加し、複数の資料から必要な情報を迅速に整理、考察し解答することが求められました。たとえば、国語では、妖怪について論じた文章を読ませ、その文章を読んだ生徒が作成したノートの空欄を補う設問が出題されました。漢文の出題では、漢詩と散文をあわせて読み解かせる内容で、文章に関するイラストも示されました。英語(リーディング)では、センター試験で出題されてきた発音・アクセント問題がなくなり、全問が読解問題となりました。スマートフォンでのメッセージのやりとりや、バンドコンテストの審査、学校でのポスターを使った発表などが題材となり、読解量が大幅に増えました。英語(リスニング)では、音声情報と図表など視覚情報を組み合わせて答える出題が増えました。世界史Bでは、文献資料、資料、グラフなど多様な資料が使用され、日本史Bで生徒の学習の場面が題材とされる出題が目立ちました。「数学Ⅰ・A」では100メートル走をテーマにした問題が出題されました。

このように、共通テストでは授業で生徒が学習する場面、日常生活で課題を発見し解決方法を探る場面など、学習の過程を意識した新傾向の問題が見られました。また教科書に載っていない資料や実験なども扱われ、既知の知識を基に推論したり、資料や問題文の情報から推測し考察したりする力が問われる出題も見られました。ただし、学ぶべきことは、教科書に載っている基本的な知識の習得や解法、公式の使い方などに変わりありません。しかし、共通テストで出題されているような様々な場面でそれらを活用するためには、知識や公式、解法など暗記をしていれば解けるということではなく、なぜそうなるのかという本質的な理解をすることで、いろいろな状況で使える知識・技能として身につくものとなります。

共通テストで出題される題材は、日常的な場面の設定や学習の場の設定が多いことからも、日常的におこる事象を様々な科目の視点で考えてみると良いでしょう。そして、授業を受ける際には、聞いて覚えるだけではなく、積極的に参加する姿勢が大切です。また、今年度は実施が見送りとなった国語と数学の記述式問題や英語の外部テストの導入も、今後は実施される可能性もありますので、日本語の記述力及び英語の4技能(読む・書く・聞く・話す)の実力向上も目指す必要があります。

(写真提供:名古屋国際中学校・高等学校)

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校、名古屋商科大学北米担当などを務める。他にサンディエゴ補習授業校教務主任。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org

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