公立高校より私立高校を選ぶ帰国生
「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
帰国後、高校に入学・編入学する生徒は、年間約1900人で、約7割が私立高校、約3割が公立高校に進学しています。一方、国内生の場合、約7割が公立高校、約3割が私立高校に進学していますので、公立高校に進学する帰国生は多くはないと言えます。高校別の帰国生徒数を見ると、私立高校では100人以上の学校が約20校、50人以上が約50校、20人以上が約80校ありますが、公立高校では、20人以上が以下の14校のみですし、10人以上の学校も約30校しかありません。
東京都立:国際、三田、竹早、日野台
神奈川県立:横浜国際、神奈川総合、新城
横浜市立:東
愛知県立:千種、豊田西、刈谷北
大阪府立:住吉、千里
神戸市立:葺合
*太字で赤文字の高校は帰国生徒数50人以上
このように私立高校に進学する帰国生の方が多い理由の一つは、出願資格や入試方法が公立高校に比べ柔軟であることです。例えば、多くの公立高校が高校入試の出願資格を、現地校の9年生修了者としていることが挙げられます。帰国生の中には、高校入学時に現地校の9年生を修了できないケースも目立ちます。現地の学校区ごとに定められている生年月日による編入学年の規定や現地校転入時の英語力などによって、学年を下げていることもあるからです。
また、私立高校の入試では、国語・数学・英語の3教科というケースが目立ちますが、以下の25道県公立高校では、国語・数学・英語に社会・理科を加えた5教科が課され、公立高校の方が受験勉強の負担が大きいです。
北海道*、青森、岩手、宮城*、秋田、山形、千葉*、富山、石川、静岡、愛知*、滋賀、和歌山、鳥取、島根、山口、徳島、香川、愛媛、高知、佐賀、大分、宮崎、鹿児島、沖縄
*札幌市立は作文のみ。宮城は日本語力によって教科数減有。千葉の安房と柏市立柏は3教科。愛知の合否判定対象は、国・数・英の3教科。
さらに、福島、栃木、神奈川、新潟、長野、岐阜、三重、兵庫、奈良、広島、愛媛、福岡、長崎、熊本の14県では課される入試教科数は少ないですが、作文または小論文が課され、私立高校より受験勉強の負担が大きいと言えます。
帰国生の学年別の比率を見ると、1年生が約65%、2年生が約20%、3年生が約15%で、高校入試を受験したり、高校1年生で編入したりする帰国生が多いことが分かります。高校への編入は、すべての帰国生受け入れ校で必ず行われるわけではなく、欠員が生じた場合のみに行われることが多いですし、帰国時期にタイミングよく編入できるとも限りません。また、高2での編入は、高1での編入よりも門戸が狭くなりますし、高3に入ってしまうと編入できる学校はごくわずかになってしまうからです。
一方、帰国生大学入試の出願資格では、現地校卒業を条件としている大学が目立ちますし、そうでない大学でも帰国後1年半以内までしか出願資格がないということも多いので、高2の夏休み明け以降に編入せねばなりません。また、国内生と同様に一般入試を受験することを視野に入れれば、できるだけ早く帰国した方が良いということになります。また、大学附属の高校に編入すれば、内部進学制度によって、大学受験をしなくてよいということもあります。これも帰国生の私立高校への進学率が高い理由の一つでもあります。
また、高度な英語教育や海外での研修制度、帰国生へのサポートなどが充実している学校は、私立高校に目立ちます。施設や設備、部活動なども同様です。これも帰国生の私立高校への進学率が高い理由となっているのです。
(写真提供:名古屋国際中学校・高等学校)
【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校、名古屋商科大学北米担当などを務める。他にサンディエゴ補習授業校教務主任。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
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