外国語と情報は全科目が新科目に変更、新教科「理数科」が登場
「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
2022年度は高等学校の学習指導要領が改訂されます。ここでは、前回(2021年12月25日公開)に引き続き、高等学校の学習指導要領における履修科目の変更について、文部科学省の資料を参考にしてまとめました。
改訂後の学習指導要領では、国語・地理歴史・公民・数学・外国語・家庭・情報の各教科に新科目が設置されます。また、理数科という新教科も設置されます。各教科の新設科目と新設の理数科の内容は以下の通りです。
《外国語》
共通必履修科目として「英語コミュニケーションⅠ」、選択科目として「英語コミュニケーションⅡ・Ⅲ」、「論理表現Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」が新設されます。
今回の改訂では、「聞くこと」、「話すこと[やり取り]」、「話すこと[発表]」、「読むこと」、「書くこと」の五つの領域の言語活動を通してコミュニケーションを図る資質・能力を育成することを目標としています。五つの領域別の言語活動及び複数の領域を結び付けた統合的な言語活動を通して、五つの領域を総合的に扱うことを一層重視する必履修科目として「英語コミュニケーションⅠ」、更なる総合的な英語力の向上を図るための選択科目として「英語コミュニケーションⅡ」及び「英語コミュニケーションⅢ」が設定されています。 また、「話すこと」、「書くこと」を中心とした発信力の強化を図るため、特にスピーチ、プレゼンテーション、ディベート、ディスカッション、まとまりのある文章を書くことなどを扱う選択科目として「論理・表現Ⅰ」、「論理・表現Ⅱ」及び「論理・表現Ⅲ」が設定されています。
《情報》
共通必履修科目として「情報Ⅰ」、選択科目として「情報Ⅱ」が新設されます。
「情報Ⅰ」では、プログラミング、モデル化とシミュレーション、ネットワーク(関連して情報セキュリティを扱う)とデータベースの基礎といった基本的な情報技術と情報を扱う方法とを扱うとともに、コンテンツの制作・発信の基礎となる情報デザインを扱い、更に、この科目の導入として、情報モラルを身に付けさせ情報社会と人間との関わりについても考えさせます。
「情報Ⅱ」では、情報システム、ビッグデータやより多様なコンテンツを扱うとともに、情報技術の発展の経緯と情報社会の進展との関わり、更に人工知能やネットワークに接続された機器等の技術と今日あるいは将来の社会との関わりについて考えさせます。
《理数科》
「理数探究基礎」及び「理数探究」の二つの選択科目で編成されます。
「理数探究基礎」は、探究の過程全体を自ら遂行するための進め方等に関する基本的な知識及び技能を身に付け、新たな価値の創造に向けて挑戦する意義の理解、主体的に探究に取り組む態度等を育成する科目です。
「理数探究」は、「理数探究基礎」などで身に付けた資質・能力を活用して、自ら設定し た課題について主体的に探究することを通じて、これらの資質・能力をより高めていく科目です。特に「理数探究」においては、生徒が自身の知的好奇心や興味・関心に基づき主体的に課題を設定することや、探究を進める中でのアイディアの創発、挑戦性をより重視するなど、生徒がより主体的、挑戦的に探究することを目指しています。その際、探究の成果としての新たな知見の有無や価値よりもむしろ、探究の過程における生徒の思考や態度を重視し、主体的に探究の過程全体をやり遂げることに指導の重点を置くこととしています。
2022年度の学習指導要領改訂によって、現中学3年生が受験する2024年度の大学入学共通テストや2025年度の各大学の入学試験の出題科目にも影響が及びます。
2024年度の大学入学共通テストの出題教科は、現行の「国語」、「数学」、「地理歴史・公民」、「理科」、「外国語」の5教科に、「情報」を加えた6教科となります。出題科目は「地理歴史」と「公民」において、「地理総合、地理探究」、「歴史総合、日本史探究」、「歴史総合、世界史探究」、「地理総合、歴史総合、公共」、「公共、倫理」、「公共、政治・経済」の6科目から最大2科目を選択することになります。また、数学の選択科目の「数学Ⅱ、数学B」が「数学Ⅱ、数学B、数学Ⅲ」に変更されます。その他の教科の出題科目は変更ありません。
なお、各大学の大学入学共通テストの利用方法や、各大学の入学試験の出題教科・科目については未発表ですので、今後の動きに注目したいと思います。
(写真提供:名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校)
【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org