進む帰国生大学入試廃止の動き

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多様化している入試方式に視野を広げ準備を進めたい

「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人


帰国生入試は、海外生活において日本語での学習を十分に享受できなかった児童生徒が不利にならないように配慮されています。中学入試や高校入試では、国内生と同一教科の同一問題を課すという学校もありますが、大学入試においては、国内生の入試に比べ負担が軽くなっています。例えば、文系学部では小論文のみ、理系学部でも数学と理科の2教科のみという大学が目立ちます。一方、国内生は、国公立大学を受験する場合、大学入学共通テストにて国語、数学、地歴・公民、理科、外国語(英語)を受験し、さらに大学独自の入試や私立大学の入試で、文系学部志望者は国語、英語、地歴・公民または数学、理系学部志望者は数学、理科、英語を受験しなければならず、いかに負担が重いかがお分かりいただけるでしょう。帰国生大学入試では、出願資格として多くの大学で海外の高校卒業を条件としていますので、高校卒業前に帰国した場合には、国内生と同じ入試方法で受験する必要があります。

帰国生入試では、英語力の高さを評価するため、中学・高校入試では英検の合格証やTOEFLのスコアの提出を求める学校も目立ちます。大学入試ではTOEFLのスコアが重視されており、一部の大学ではアメリカの大学進学のための共通試験であるSATやACTのスコアを合否判定に利用しています。そのため、特に英語圏で学んだ帰国生にとってはアドバンテージが高いと言えます。日本語での学習に加え、英語力を磨き、TOEFLのスコアアップを図ることも必要です。

また、帰国生入試は、人気校でも、受験倍率が国内生の入試より低く合格率も高いという、ある意味でありがたいシステムとなっています。しかし、大学入試においては、帰国生入試を廃止するという動きが進みつつあります。以下は、2021年度以降に帰国生入試を廃止した、また廃止予定の主な大学です。特に、今後、帰国生にも人気の慶應義塾大学や早稲田大学の帰国生入試が廃止されることは、帰国生に大きな衝撃を与えています。

●帰国生大学入試を廃止・廃止予定の主な大学・学部
《2021年度》
東京農工大(工・農)
早稲田大(文・文化構想・人間科学・スポーツ科学)

《2022年度》
電気通信大(情報理工)

《2023年度》
千葉大(薬)

《2024年度》
長岡技術科学大(工)、大阪大(理-数学・物理・化学)
早稲田大(基幹理工・創造理工・先進理工)

《2025年度》
慶応義塾大(文・商・医・看護医療・薬)、早稲田大(法・商・教育)

帰国生大学入試廃止の動きが進んでいますが、大学によっては、日本国籍保持者であっても外国人留学生入試が受験できる場合があります。日本留学試験または日本語能力試験を受験し合格する必要がありますが、入試方法は帰国生入試に類似しています。また、英語学位取得プログラムを実施する大学は続々と増加しています。この入試は書類選考のみです。さらに、AO入試やグローバル入試などは国内生を対象とした入試ですが、日本国籍や永住権保持者であれば受験可能です。これらの入試も入試方法は帰国生入試に類似しています。また、国際バカロレア(IB)入試実施大学が増加しています。この入試は国際バカロレア(IB)の科目を履修して単位を取得していれば出願が可能で、書類選考のみという大学もあります。このように日本の大学入試は多様化しているので、帰国生入試に加え、いろいろな入試方式を視野に入れて、受験の準備を進めておくとよいでしょう。

(写真提供:名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校)

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org

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