小学生で帰国する子どものアメリカ生活

0

在外子女教育に携わって考えること(その7)

親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育

米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人

今回は、小学生で帰国する子どものアメリカ生活を英語および日本語の習得という視点で述べさせていただきます。

日本の小学校の朝の会

日本の小学校の朝の会

小学1・2年生で帰国する子どもは、乳幼児期に来米していることが多く、中にはアメリカ生まれという子どももいます。家庭内では日本語を使っていても、現地の保育園や幼稚園に通園している場合には、英語が第一言語になりやすい傾向があります。家庭内でも英語の本を読んだり英語のテレビを観たりすることも多くなりますし、兄弟姉妹との会話も英語ということもあります。したがって、帰国を予定している場合には、家庭内で日本語を使用することを徹底し、日本語の本を読んだりテレビを観たりすることや、日系の幼児教室や補習授業校の幼稚園を利用することが大切です。また、学齢期になった際には、補習授業校にて学習することも必要です。ただし、帰国後は日本語での会話が理解できないということでなければ、学校や友達にもすぐに馴染んで、あっという間に日本の子どもと変わらなくなります。逆に身に付けた英語を忘れてしまう子どもが多いくらいです。

小学3・4年生で帰国する子どもは、幼児期や小学校入学後の間もない時期に来米していることが多いです。来米直後は、英語や現地校の環境に戸惑うこともありますが、すぐに馴染む子どもが目立ちます。現地校ではもちろん、家庭でも現地校の宿題に取り組むために英語で学習する時間が多くなり、英語が第一言語となる傾向もあり、一方で、日本語力が伸び悩む子どももいます。家庭で日本語での会話や日本語の本やテレビなどに触れる機会を増やすことを心がけることが大切です。また、日本の学校の小学3・4年生の学習は、小学校入学後からの積み重ねがないと理解するのが難しくなることもあります。帰国後に日本の学校の学習に適応できるようにするためにも、補習授業校での学齢相応の学習の継続が大切です。

小学5・6年生で帰国する子どもは、小学校低学年時に来米していることが多いです。中には、幼児期に来米している子どももいます。来米直後は、英語や現地校の環境に戸惑うことが多いのですが、現地校の学習内容もそれほどは難しくはなく、現地の友達もできやすいので、しばらくすると馴染めるようになります。英語力の定着は個人差があり、英語が第一言語のようになる子どももいますが、そこまでには至らない子どももいます。後者の場合、現地校がミドルスクールになると、英語での学習に苦労するということもあります。一方、前者の場合は、帰国後に日本の学校での学習に苦戦するということもあります。補習授業校での学習の継続が重要です。

日本の小学校の給食の時間

日本の小学校の給食の時間

小学生で帰国する子どもは、帰国後は公立小学校に編入することが多いため、卒業後は大半が公立中学校へ進学します。国私立中学校への進学を希望する場合、補習授業校での学習のみでは中学入試には対応できないこともあり、アメリカにいる時から学習塾や通信講座を利用する子どももいます。私は学習塾で指導していた時に中学入試受験生を担当したのですが、その子どもたちは小学6年生の秋からは授業数を増やし、平日のほぼ毎日の夜と毎週土曜日に受験対策の学習に取り組みました。現地校での学習と学習塾での受験勉強の両立のために睡眠時間も少なく、かなりハードな生活が続きましたが、子どもたちはよく頑張りました。一方、特に難関国私立中学校への進学を受講する場合には、早めに受験勉強の態勢に入るため、4・5年生で帰国するという子どももいます。中学入試の試験会場で、すでに帰国した同級生と偶然再会したというような話もよく聞きます。

次回は、『中学生で帰国する子どものアメリカ生活』を掲載します。

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org

●親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育──過去の掲載●

●「在米親子にアドバイス」日米の教育事情──過去の掲載●

Share.