在外子女教育に携わって考えること(その12)
親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
私は補習授業校や学習塾の教師として、長年にわたり多くの子どもたちと出会いました。すでに帰国した子どもも多いですが、アメリカで生活している子どももいます。また、社会人として活躍している子ども(もう大人ですが…)もいます。一人ひとりの活躍ぶりを把握しているわけではありませんし、特に小学生や中学生の時に帰国した子どもの進学した大学や就職先はよく分かりません。しかし、ある日、帰国生中学入試を受験して、有名難関大学附属の中高一貫校に入学し大学生となった教え子が、テレビ番組の天気予報のコーナーに出演している姿を見かけ、その成長ぶりに感激しました。小学生ながら、TOEFLで高スコアを上げるという抜群の英語力がありましたので、今は社会人となり、英語力も活かして活躍していることと思います。このシリーズの最終回となる今回は、アメリカ育ちの子どもたちの大学卒業後の様子について述べさせていただきます。
補習授業校の高等部卒業後に帰国し、帰国生大学入試を受験して日本の大学に進学した子どもたちの中には、大学卒業後、外資系企業に就職したり、日本の企業の海外駐在員として海外に派遣されたりして、海外で習得した英語力を活かして活躍しているケースが目立ちます。ただし、英語ができるだけで帰国生の就職が有利という時代ではなくなっているのも実情です。国内の学校での英語教育が進んでいることもあり、また、大学入試や文部科学省の学習指導要領で英語の四技能(読む、書く、聞く、話す)の習得が重視されていることもあり、国内生の英語力の向上が目立っているからです。企業は、日英バイリンガルであることはもちろんですが、どのような専門的な知識や技能があるかを判断するようになっています。したがって、他の学生と同様に、大学で何を専門にして学んだのか、つまり、どんな学部・学科を卒業したのかが重要になっています。
補習授業校高等部卒業後に日本の大学の英語学位取得プログラムに進学した子どもたちは、卒業時期が5~6月なので、3月卒業の日本の学生と同じように、日本の企業や官公庁に就職することは難しいです。しかし、外資系の企業の日本支社への就職ではすばらしい実績を上げています。外資系の企業は就職時期を特に定めていないこともあり、私の教え子でも、「ビック4」と呼ばれる4大会計事務所に就職したケースがあります。また、アメリカに戻り、在米の日系企業に就職した子もいます。ただし、これらは社会科学や理科系を専門に学んだ場合のケースであり、人文系を専門とした場合は苦戦していることもあります。
補習授業校の高等部卒業後に、アメリカの大学に進学した子どもたちの多くは、アメリカの企業に就職しています。日英バイリンガルであることが評価され、日系企業で活躍しているケースも目立ちます。ただし、アメリカの企業は、日本の企業以上に専門的知識や技能を重視します。つまり、大学で学んだ専門分野(専攻)が、就職の有利不利を左右しますし、年俸にも影響します。私の教え子でも、サイエンス、エンジニアリングやビジネス系の専攻などで学位を取得した生徒が有名企業に就職し、好条件で採用されています。
また、アメリカの大学卒業後に日本で就職しているケースもあります。日本の企業や日本に進出している外資系企業の中には、日英バイリンガルで専門性の高い人材を獲得するために、アメリカの大学の学生に対する求人を積極的に行っているところもあるからです。私の娘は補習授業校高等部卒業後、アメリカの大学でサイエンス系の学位を取得し、アメリカの医薬品関係の企業に採用されましたが、その企業の東京支社に勤務し、現在は別のアメリカの企業の東京支社に転職しています。娘と同様に、アメリカの大学を卒業し、日本の企業で就職している教え子は他にもおり、それぞれ活躍しています。
このように、アメリカで育ち、補習授業校で学び、バイリンガルとなった子どもたちは、グローバルな世界に羽ばたいて活躍しています。今後も、地球の未来のために頑張ってくれることを期待しています。
このシリーズは、これで最終回となります。ご拝読ありがとうございました。
【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org