変化が見られる補習授業校に在籍する児童生徒

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変わる補習授業校が抱える課題と対策(その1)

親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育

米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人

補習授業校について、文部科学省のウェブサイトでは次のように説明されています。(一部省略・令和6年は2024年)
『現地の学校や国際学校(インターナショナルスクール)等に通学している日本人の子どもに対し、土曜日や放課後などを利用して国内の小学校又は中学校の一部の教科について日本語で授業を行う教育施設です。現地の日本人会等が設置運営主体となっています。
昭和33(1958年)年に米国のワシントンに設立されて以来、令和6年7月1日現在では、世界51カ国・1地域に242校が設置されており、令和6年4月15日時点で約2万1千人が学んでいます。
教育の特色としては、国語を中心に、施設によって算数(数学)、理科、社会などを加えた授業が、国内で使用されている教科書を用いて行われています。』

漢字の勉強をする小学生の男の子(イメージ写真)

漢字を学習する小学生(イメージ写真)

このような補習授業校ですが、かつては現地校に通学する児童生徒が再び日本国内の学校に編入した際にスムーズに適応できるよう基幹教科の基礎的基本的知識・技能および、日本の学校文化を日本語によって学習する教育施設であるとされてきました。しかし、現在の補習授業校の姿は様変わりしています。それは、在籍する児童生徒に変化が見られるからです。

外務省の海外在留邦人数調査統計によると、米国の2023年10月時点の在留邦人は414,615人で、長期滞在者は約45%の186,437人です。2011年10月時点の在留邦人は397,937人で、長期滞在者は約61%の241,910人でした。長期滞在者は永住者ではなく、帰国を予定している、いわゆる駐在員やその家族を指します。つまり、米国に在留している駐在員の家庭数が減少しているのです。また、文部科学省の学校基本調査によると、2023年時点で北米には89校の補習授業校があり、在籍児童生徒数は12,072人です。2011年時点では87校、11,317人でしたので、755人増加しています。前述したとおり、駐在員の子どもは減少しているのに補習授業校在籍児童生徒数が増えていますので、補習授業校に在籍する児童生徒に占める駐在員の子どもの比率が低くなり、永住者の子どもの比率が高くなっていることが分かります。また、在留邦人ではなく米国籍の子どもも増えています。一方で、特に大都市圏の駐在員の家庭では、補習授業校ではなく学習塾を選択するケースが目立ち、さらに、コロナ禍においてインターネットを利用したオンライン講座が普及し、帰国後のための日本語学習や受験対策などが在宅でできるため、補習授業校を利用しない駐在員の家庭が増えているという状況も見られます。

父親と子供(イメージ写真)

父親と子ども(イメージ写真)

このように、補習授業校は、かつてのように帰国予定の駐在員の子どもを対象とした日本語教育が主たる目的ではなく、帰国を予定していない子どもも対象にした日本語教育を行う教育施設となっています。そのためにさまざまな課題を抱えているのが実情です。次回は、これらの課題と対策について、ご説明させていただきます。

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org

●親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育──過去の掲載●

●「在米親子にアドバイス」日米の教育事情──過去の掲載●

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