変わる補習授業校が抱える課題と対策(その3)
親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
前回は、変化が見られる補習授業校に在籍する永住や米国籍・二重国籍の子どもの課題と対策について説明させていただきました。今回は、駐在員の子どもの課題と対策について説明させていただきます。
多くの駐在員の家庭は、数年後に帰国を予定しています。したがって、補習授業校で学ぶ目的や意義は明白です。また、多くの子どもが学年相当の日本語力を身につけており、その点では問題ありません。しかし、補習授業校に通学しない子どもが増加しているということが問題だと思います。この背景には、ご家庭の教育方針の変化があります。

補習授業校の運動会
その一つは、せっかくアメリカに来たのだから英語を十分に習得させたいとか、現地校と補習授業校との両立は負担が大きいので補習授業校には通わせないという家庭があることです。しかし、日本語での学習から離れると、子どもの日本語力は急激に低迷します。家庭内での会話でそれを感じることはないのですが、日本の教科書を使って学年相当の学習をしていないと、漢字の読み書きや学習言語の習得に支障が生じます。来米してから1年以上現地校に専念していた子どもが補習授業校に編入しても、学齢相当の学年の授業についていけなくなっているというケースがあります。日本語での学習をしていない期間が長くなればなるほど、キャッチアップすることが難しくなりますので注意が必要です。
また、学習塾や通信教育・オンライン講座などで日本語での学習を進める家庭もあります。補習授業校の学習内容が受験に対応していないためというのは理解できます。しかし、日本国内の学校に編入後には、国語や算数(数学)、社会、理科などの教科の授業を受けるのみではなく、運動会や入学式・卒業式などの学校行事、部活動などに参加することになります。また、クラスメートとともに集団生活をしなければなりません。そのため、補習授業校では、日本語での教科学習のみではなく、日本の学校文化を学ぶことのできる環境を整えています。もちろん、日本国内の学校と同じことはできませんが、それに準ずる学校行事を行っていますし、授業時において、日本式の礼法やマナーなどを指導しています。また、同級生や上級生、下級生、また教師との人間関係なども体感できます。補習授業校に通学しなかった子どもが、日本国内の学校に編入後、学校生活になじめなかったということも耳にしています。かつての駐在員家庭では、来米後すぐに補習授業校に通学していましたし、帰国後の受験対策のために学習塾を利用していても、土曜日には補習校に通学していましたが、それは意義あることだったのです。

補習授業校の卒業式
このように、補習授業校は、海外に在住する子どもにとって重要な日本語教育施設です。そこで学ぶ目的や意義を十分に理解し、子どもたちの明るい未来のために、有効活用していただきたいと思います。
【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org