一時帰国中に日本語力の向上をめざすには
親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
北米の学校は長い夏休みに入っています。夏休みは日本に一時帰国し、お子さんを日本の学校に体験入学させる家庭が目立ちます。日本の学校で同学年の子どもたちと机を並べて勉強したり、学校生活を経験したりすることは、日本語学習のモチベーション向上にもつながり、とても良いことです。しかし、7月第3週を過ぎると夏休みに入る学校がほとんどですので、その後に一時帰国される場合は難しいです。また、市町村によっては、体験入学でも編入学として扱い、住民登録していない場合は受け入れられてもらえないということもあります。それから、学齢相応の日本語力がないと授業内容が理解できず、かえって日本語学習のモチベーションを低下させてしまうこともあります。

古民家で楽しく食事をする子どものイメージ画像(筆者作成の生成AI)
このような場合には、日本で行われている体験型学習プログラムに参加するとよいでしょう。最近では、日本国内でも体験型学習プログラムが多数行われていますが、日本在住の子どもを対象にしたプログラムの場合、お子様の日本語力によっては他の子どもたちについていくことができないということもあります。したがって、海外在住の子どもを対象とした企画に参加することをお勧めします。例えば、外国にルーツを持つ子どもたちや帰国生のためのサマーキャンプまたは社会科見学、体験学習などと題したプログラムがお勧めです。ご興味をお持ちになりましたら、ウェブサイトで検索してみてください。
実は、このような体験型学習プログラムをお勧めするのは、私が同様なプログラムを実施していたからです。それは、日本語・日本文化体験学習プログラム「サマーキャンプ in ぎふ」で、毎年夏に岐阜県の里山の地域にて、海外在住で日本語学習中の小中学生・高校生を対象に、2006年から2017年まで実施していました。(現在は実施していません。)
このプログラムでは、10日間から2週間にわたり共同生活を送り、古民家での生活体験、伝統文化体験(ものつくり、食つくり、芸能体験など)、自然体験(ハイキング・川遊びなど)、地域交流体験(スポーツ・音楽などを通じた交流)、地域生活体験(ホームステイ)、禅寺体験(座禅・読経・習字など)などの多彩な自然・文化・歴史体感プログラムを実施しました。また、地元の公立小学校・中学校・高校での体験入学や史跡見学、手作りのいかだでの川下り体験や農業体験なども行いました。アメリカをはじめ、多様な国や地域から、どちらかというと日本語よりも外国語の方が得意な子どもたちが参加しましたが、これらの体験は、すべて日本語で進めたので、日本語を使う機会が多く、解散時に迎えに来た保護者に日本語で楽しかった経験を話す姿を見かけるなど日本語力が上達するのを感じました。また、自宅に戻ってからも、日本語の本を自ら積極的に読むようになったということもお聞きすることもありました。

清流での川下りを楽しむ子どものイメージ画像(筆者作成の生成AI)
このようなプログラムに参加することはできなくても、子どもが日本で楽しく過ごし、日本が好きになれば、日本語学習のモチベーションは向上するでしょう。親族やご近所の皆さんや子どもたちとに過ごすことだけでも、日本語を話したり聞いたりする機会が生じます。親御さんも日本で生活している間は日本語のみで話すなど、日本語の環境を作るという姿勢を心がけましょう。そして何よりも子どもが日本のことを大好きになり、日本にまた行きたい、もっと日本のことが知りたい、もっと日本語ができるようになりたい、などと思わせることが大切です。日本への一時帰国が、お子様の日本語力や日本語学習のモチベーションの向上につながることを、大いに期待しています。
【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
E-mail:info@ujeec.org