日本でも増える国際バカロレア(IB)認定校
親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
日本でも国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)認定校が増加しています。2025年9月時点での認定校数は271校となりました。
国際バカロレア(IB)は、国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラムです。スイスに世界各国から集まる国際機関の職員の子ども達に対し、世界共通の教育を行うために生まれましたが、現在では世界中に広がり160以上の国・地域の約6000校で実施されています。
国際バカロレア(IB)の教育区分と各々の日本における認定校数は以下のとおりです。
・PYP(Primary Years Programme)3-12歳《認定校:82校、候補校:46校》
・MYP(Middle Years Programme)11-16歳《認定校:44校、候補校:16校》
・DP(Diploma Programme)16-19歳《認定校:77校、候補校:5校》
・CP(Career-related Programme)16-19歳《認定校:1校》
また、国際バカロレア(IB)の教育目標は以下のとおりです。
1)子どもたちが世界の複雑さを理解し、それに対処できるよう育成する。
2)未来に対して責任ある行動をとるための態度、及びスキルを、子どもたちに身に付けさせる。
3)国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保する。

英語でディベートをする中学生のイメージ画像(筆者作成の生成AI)
このような国際バカロレアのプログラムに魅力を感じ、帰国後の進学先として認定校を選ぶ家庭も増えていますが、メリットだけでなくデメリットもあります。
国際バカロレアのデメリットとして考えられることは以下のとおりです。
1)授業負担が非常に重い(ワークロードの多さ)
IBの最大の特徴でもある「探究・論証・アウトプット中心」の学習は高度ですが、生徒にとっては負荷が重いと言われます。
主な負担ポイントとして、大量の課題(エッセイ、IA、リフレクション等)があり、締切が重なりやすく、計画力が必要であることが挙げられます。特にDPは「高校生にとって世界で最も負荷の重いプログラム」と呼ばれることもあります。
2)成績評価が「相対試験+外部評価」で厳格
IBの成績は外部評価も含まれ、学校の裁量がほとんど効かないため、生徒にとっては救済措置が少ないと感じることがあります。
3)英語(または主要言語)の読解・記述力が必須
DPでは学術論文に近い文章や専門的内容を読み書きする必要があるため、英語力の要求レベルが高く、Writingが苦手な生徒はかなり苦戦しています。
4)国内の大学入試に必ずしも適合しない
近年はIB入試枠が拡大していますが、一般入試とは形式が大きく異なるため、IBで学ぶほど国内の一般的な受験に対応しにくいのが実情です。
5)学校数がまだ少ない(特にMYP・DPの連続性)
日本国内ではPYP(小学校)は増えましたが、MYP・DPを連続して提供している学校は少ないですし、DPのみ導入している高校も多く、中学〜高校で一貫したIB教育が受けにくいです。結果として、途中からIBに入る場合、カリキュラムの違いによる学習ギャップが発生します。
6)「英語DP」が多く、英語が苦手だと苦しい
日本では多くの学校が英語DP(授業を英語で実施)を採用しており、英語で数学・生物・経済を学ぶ必要がありますが、英語が不得意な生徒にはハードルが高いです。「日本語DP」は導入校が増えてきたものの、まだ少数です。
7)費用が高い
追加の費用がかかり、授業料が高くなる学校もありますし、海外大学進学を視野に入れると費用負担が大きいです。

海外の大学のキャンパスで談笑する女子学生のイメージ画像(筆者作成の生成AI)
IBは優れた教育プログラムですが、このようなデメリットも考えられますので、子どもにとって「合うか合わないか」という点の見極めが必要です。
◆IBが向いている子ども
探究型学習が好き。自己管理力と計画性が高い。英語での学習に抵抗がない。将来海外大学進学を視野に入れている。
◆IBが向かないことが多い子ども
試験型(暗記中心)の学習が得意。英語が苦手。課題量の多さにストレスを感じやすい。
お子様とともによく話し合い、進学をお決めになることをお勧めします。
【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米・中南米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
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