歯痛のための緊急治療室はありません!
皆さん、歯が急に痛み出して緊急治療室に行ったことはありますか? ある研究機関の調査によって、緊急治療室へ歯痛や歯の感染症を理由に訪れる患者は、ニュージャージー州では低所得で無保険の若い世代(19~34歳)が最も多いことが分かりました。さらに米歯科協会の研究から、同じ理由で緊急治療室を訪れる患者の全体数が、2000年から10年間で約2倍になり、110万人から210万人に増えていることも発表されました。
これらの結果から、歯科への通院を敬遠している人が多いということが見てとれます。しかし歯の痛みは徐々に強くなることが多いため、痛みに耐えられなくなった時に緊急治療室へやむを得ず行く、という傾向があるようです。
●緊急治療室の現状
こんなにも多くの人が歯痛が原因で緊急治療室を訪れているにもかかわらず、緊急治療室には診察に必要な専門装置や道具(歯専用のX線機器など)が不足しています。さらに歯科医が在籍していることも少なく、痛みの原因を特定し治療するための訓練が行われていないのが現状です。専門外の医師では、感染症のための鎮痛剤、抗生物質の処方や抜歯など、応急処置程度の治療しか受けられません。治療費も抜歯を歯科で行う場合、平均額が150ドルなのに対して、緊急治療室であれば同じ治療が1500ドルほどになってしまいます。
●予防と対策
根本的な解決につながらない可能性のある緊急治療室に多額な費用を払うよりも、日ごろから定期健診を受けて、前もって必要に応じた治療を受けていた方が、いざという時の費用を抑えることができます。
それでも、もし急に歯に痛みを感じたら、緊急治療室へ行く前にまずは歯科医に電話をしてみてください。たとえ予約がいっぱいで診察が受けられないときでも遅くまで開いている歯科や、歯科の設備が整っている緊急治療室を紹介してくれる可能性もあります。
(次回は10月第3週号掲載)
〈筆者プロフィル〉石橋香也子(いしばし かやこ) ニューヨーク大学歯学部卒業。ルーセラン・メディカルセンターで一般歯学の臨床研修課程修了。
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