着床前診断24~最新の性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断方法(12)〜
現時点での妊娠のため最適な方法論(1)
今回からは、ほぼ2年間かけて説明してきた、最新の着床前診断の総まとめを開始いたします。
性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断を付随する体外受精の妊娠への成功を導くためには、以下の三つの大切な鍵があります。
(1)着床前診断のためにどの技術が使用されるか
(2)着床前診断のための生体検査がどの受精卵分割ステージで行なわれるか
(3)着床前診断された受精卵がいつ移植されるか
1 着床前診断のためにどの技術が使用されるかについて
妊娠しない理由の多く・流産する理由の多くが、染色体異常が問題だと分かっていることから、常染色体の着床前診断を行うことは、妊娠に結びつかない移植を回避することによって、精神的、時間的、肉体的、経済的な負担を取り除くことを移植前にできる有効な技術です。また、性染色体分析によって性別の希望をする患者様にとっても23対の染色体異常検査は有効な方法です。
染色体の異数性(異常な数の染色体を持つ状態)は人間の受精卵において最も多い遺伝子異常であり、流産、及び、体外受精が妊娠に結びつかない主な原因と言われています。つまり、染色体の異数性を持つ受精卵の移植を避けることによって妊娠率を向上させることができます。現在、この染色体の異数性を検査する着床前診断の技術が市場に出ていますが、多くの方法に技術の限界があるため、実際には妊娠率を向上に結びついていません。以前に当コラムで説明してきたように、エラー率が認められるためです。市場で最も普遍的に使用されているaCGH(アレイCGH)法は、以前使用されていた方法論よりは数段エラー率に関して改善されているものの、生殖医療が求める水準にはまだ到達しているとは言えません。現在、エラー率で最も信憑性が高いとされている方法は、qPCRで、生殖医療業界でも、この方法が次第に普及してきています。使用する技術によって、妊娠成功率に大きく依存することを患者は理解するべきです。
次回は着床前診断のための生体検査がどの受精卵分割ステージで行われるかについてまとめます。
(次回は12月第1週号掲載)
〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/