日銀の追加金融緩和、新たな通貨戦争の火種か
先週行われた金融政策決定会合で、日銀は追加の金融緩和策を決め、マーケットに大きなサプライズを起こした。日銀発表によると、今後マネタリーベース(資金発行量)の増加ペースを現在の年間60〜70兆円から、10〜20兆円増やし、長期国債の買い入れも30兆 円増やして年間80兆円とし、さらにETF(上場投信)とJ―REIT(不動産投資信託)も年間3兆円と900億円それぞれ買い入れるという。
GDP(国内総生産)発表前のこの時期に突如追加緩和を決定したのは、消費増税の影響が予想以上に大きく、目標としているインフレターゲットの達成が困難になっているからだ。この日銀の決定と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の国内株式の比率引き上げ報道をうけ、ドル円は111円まで暴騰し、日経平均株価は大幅に上昇した。
米国でQE(量的緩和)が終了し、利上げ時期を見定めてる中、対照的に日銀を含め各国が不況とデフレ回避のため、金融緩和に走り、結果として自国通貨安に誘導している。ECB(欧州中央銀行)は今年マイナス金利を導入し、更にカバード債購入を10月に開始した。韓国銀行も先月政策金利を2%に引き下げ、中国は経済成長の鈍化の真っ只中、人民元高抑制のため為替介入を2月から実施し、豪州ではオーストラリア準備銀行が記録的な低金利政策を続けている。
今回の日銀の決定により、今まで取り立て日銀の金融緩和政策に言及してこなかった各国もいずれ問題視し始めるだろう。日本からのデフレの輸出がこのまま拡大し、長期間続くと、各国の自国通貨安政策が更に激化し、通貨戦争へと発展していく可能性がある。特に、中国と韓国の両国は貿易相手として、また貿易競合相手としても、円安による影響を大きく受けるため、心中穏やかではないだろう。中国経済の鈍化と人民元の価値上昇が続いてる現在、中国人民銀行は対抗策として、今年2月以来の為替介入を再び実施する事も考えられる。そうなっていくと、各国間のデフレのババ抜きゲームが始まるだろう。
(在NYエコノミスト チングーン・ボロルマー=写真、l.cbolormaa@gmail.com) (次回は12月第2週号掲載)
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