〈コラム〉ケン青木の新・男は外見 第74回

0

クラシックは奥深い

dodl今シーズンは、ジャケットに人気が集まっているようです。厳密に申し上げれば、ジャケットの生地に対して。そして特にチェック柄が人気なのです。どのチェック柄が、と言うことはなく、満遍なく、ほぼ全てのチェック柄が注目されていると言っていいのかもしれません。さらにそうしたチェック柄のジャケットを持つだけでなく、ベストやパンツも同じ生地で作って、スリーピースとして着てみたり、またそれぞれをバラバラに活用したり、自由な着こなしを楽しむのです。こうしたことも一つのカジュアル・ドレス化だ、と言えるのかもしれませんが、確実に言えることはクラシック回帰の傾向が強くなってきているということなんです。と言いますのは、チェック柄のほとんどは、タータンやグレンチェック、ハウンドトゥースなど、スコットランドやイングランドで何百年と受け継がれてきた“万年柄”などと呼ばれる、定番や定番をベースにしたものがほとんどなのですね。そして、こうした柄をきちんとスーツに仕立てるにも、伝統的な技術、つまり、classicな仕立て技術、ノウハウが欠かせないのです。チェック柄でジャケットなどを仕立てる際に大事なことは“柄合わせ”なんです。そのため無地の生地を仕立てる時よりほぼ2割増しの生地の量が必要なのです。
皆さん、クラシック回帰と書きましたが、classicの本当の意味、分かっておられますか? classicは、classの形容詞ですが、名詞にもなり、The Classicsとすれば歴史的傑作品、つまりmasterpieceの意味になります。Golfのトーナメントにもしばしば使われてもいますが、この場合、頂点の意味になります。それ故、音楽におけるclassicなども傑作である故、歴史の流れに埋れることなく現代に生き残っているのです。さらに生地やスタイルにおけるclassicには、classicであることを決めてきたのは消費者であり、そうした意味でclassicには、“飽きのこない”という意味、ニュアンスもあるのです。このようにclassicとはとても難しい言葉なのです。
それではまた。
(次回は11月第4週号掲載)

32523_120089421361491_100000813015286_106219_7322351_n
〈プロフィル〉 ケン青木(けん・あおき) ニューヨークに21年在住。日系アパレルメーカーの米国法人代表取締役を経て、現在、注文服をベースにしたコンサルティングを行っている。日本にも年4回出張。

過去の一覧

Share.