「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第34回
私はスポーツをすることが好きで数年前まではアメリカでもサッカーをしていたので体力には自信があったのですが、当分の間、運動から遠ざかり、最近は週末に娘とテニスを1時間ほどしただけで息が上がり、運動不足と体力の低下を痛感します。学生の頃は学校で体力測定というものがありましたが、社会人になってから、100メートル走などタイムを測る機会がありませんが、現在はどれくらいなのか知りたい反面、測るとすると散々な結果になりそうです。
さて、人間の体の体力測定と同じように会社の体力測定の測り方というものがあります。大体どこの会社でも作成しているバランスシートというものから分析することができます。多くの経営者は現在の成績である損益計算書を中心に経営状態を把握する傾向にありますが、会社自体の体力も見ることも大切です。気をつけておかないと損益計算書では売り上げは良く、利益が出ているのに倒産するという黒字倒産ということもあります。
バランスシートは右と左にわかれ、右は資金の調達先を表し、左はその資金の使い道を表します。左側はAssets(資産)と呼ばれ、会計学では、簡単にいうとFuture Revenue、つまり、現金、在庫、売掛金、材料、生産設備、投資有価証券など未来の売り上げに変わる可能性があるものを指します。それでは、帳簿上、資産が多い会社が体力のある会社として信じてよいかと思うとそうでもありません。外見上は良くても実際は細かく中身を見ていく作業が必要です。これを会計ではデゥーデリ(Due diligence)と呼んだりします。これが、会社の体力測定のようなものに当たります。例として、簡単に現金、在庫、売掛金、生産設備、投資有価証券が各1ミリオン、合計5ミリオンと帳簿に記載されている会社を想定します。5ミリオンといえば結構な資産があると思いがちですが、チェックしてみると売掛金は、半分が回収不可能。在庫は、半分が陳腐化しており出荷不可能。生産設備は古くなっており、売却した場合の資産価値は半分。投資先の会社は破綻確実。結局、実際の未来の売り上げに変えられる資産価値は2・5ミリオンという半分の結果になってしまいました。体力測定や健康診断などは体に異常がない時は必要ないように思いますが、定期的にチェックすることも大切です。といいつつも、私も健康診断は当分行っていませんので、近いうちに予約を入れようと思います。それでは、皆様の成功を祈ります。
(次回は12月第2週号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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