着床前診断8~性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断を成功させるためには⑵~
卵巣の情報が治療や妊娠を導く最も重要な基礎となる
前回からのリポートでは、性染色体を含む23対の染色体異常を調べる着床前診断を望む性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断を成功させるために知っておくべき体外受精治療の基本を説明しています。
前回は、22対の常染色体の着床前診断を行う場合も、性染色体(男女産み分け)を目的とする場合にも、まず大事なのはご自分の生殖能力を知るところから始まる、と説明いたしました。これは、生殖能力より、着床前診断を行なった後、いくつ程の受精卵が分割を続け、移殖のために残るか、良い質の受精卵が期待できるか、妊娠率はどの程度見込めそうか予想できるからです。また、生殖能力によって、最も適切である治療(体外受精サイクル)の方法論、薬の種類、薬の量が決定されます。この卵巣の情報が、治療、そして成功(妊娠)への最も重要な基礎となります。この情報を基に、どの程度排卵促進剤に反応しそうかという予測と、期待できる大よその妊娠成功率を知ることもできます。
生殖能力は、人それぞれで、年齢でグループ化できるものではありません。30代半ばで閉経に近い生殖能力である方もいれば、40歳でも妊娠能力を持つ健康な卵胞が十分にある方もいます。毎日のように、生殖医療に関わる治療やプログラムに関するお問い合わせをいただきますが、たまに“私は非常に健康で年齢より若いので卵巣のホルモン値の検査も大丈夫だと思います”というご連絡をいただくことがあります。卵巣は体の臓器の一つであり、時間の経過と共にどの臓器も年をとるように、卵巣の卵胞数も枯渇していきます。女性はある一定数の卵胞を持って誕生します。初潮が始まってから、排卵後、月経が起こり毎月その数が減っていきます。持って生まれた卵胞が完全に枯渇した時に排卵はなくなり月経はなくなります。これが閉経です。また、平均的には27歳以降、質も劣化し始める、と言われています。質の劣化は35歳以降顕著ですが、弊社のクライアントでは30代後半で閉経を迎える方もいらっしゃいます。この数と質の両方が生殖能力を意味するものです。
生殖能力を知ることができる基本の検査は生理の3日目に行なわれます。ホルモン値、そして、卵胞の数によって示されます。
次回以降も、成功のための治療基本の説明を継続してお伝えしていきます。
(次回は8月第1週号掲載)
〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/