着床前診断16 ~最新の性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断方法(4)~
qPCR法はエラーの根源である全ゲノム増幅法を使用していない
前回のリポートでは、現時点で最も普及されいる着床前診断、PGDの技術であるaCGH(アレイCGH)法のエラー率(誤り)が約5%もあること、そして、医療業界初の限りなくエラー(誤り)がない新型着床前診断、qPCR法が登場したことをお伝えしました。
では、aCGH法は何が問題でエラー(誤差)を生じさせているのでしょうか?
ChipベースのaCGH法は全ゲノム増幅(Whole Genome Amplification)法を使用しています。これがエラー(誤差)を引き起こす大きな問題です。全ゲノム増幅法とは採取した微量のDNAを増幅させることを意味しますが、微量であるものを膨らませるために、エラーがここに起因します。日常的なことに例えて言うと、小さな図をコピー機で過度に拡大した場合、図面がぼやけてしまうのと似ています。そのぼやけをもとに23(対の染色体)の重要な鍵を分析するのですから、False positive(過って問題がある、と判断されること)、及び、False negative(問題があるのに過って問題がない、と通過すること)のエラー発生がありえるのです。
2013年の春に米国生殖医学会(ASRM)の文献雑誌に発表された限りなくエラー(誤り)がない米国の医療業界初の新型着床前診断、qPCR法はChipベースではなく、また、エラー(誤差)の根源である全ゲノム増幅法を使用していません。臨床データによるとqPCR法はエラーも最極小限で3000サイクル行った現時点でエラーが見られません。
また、着床前診断(PGD)の方法論を比較するときに、各技術の正確性のみでなく、各技術の結果取得にかかる時間も、体外受精サイクルの成功のためには大切な要因です。
数年前に普及していたFISHを行う場合は、医療機関は3日目の受精卵に対して生体検査を行い、一つの細胞を採取し、検査場へ当細胞を送っていました。そして、結果が分かる5日目に移植が行われていました。現在最も普及しているaCGH法は結果が出るまでに24時間かかるため、受精卵5日目のフレッシュ移植のためには3日目の受精卵の細胞を採取する必要があります。ここに大きな問題があります。この問題とは何か、次回のリポートで説明いたします。 (次回は4月第1週号掲載)
〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/