対話の力(14)〝アカウンタビリティ〟(その4)
こんにちは。COACH Aの竹内です。前号(2014年11月29日号掲載)では、上司のAさんが自らの振舞いや行動を客観視しアカウンタブルに変化していかれる過程をご紹介しました。今号では、Aさんの関わりによって、部下の方たちがアカウンタブルになっていった事例をご紹介します。
Aさんは部下の方とやりとりする際、相手の立場に立って考えたり、部下の方からのフィードバックをもとに自分自身を俯瞰してみたりするようになりました。その結果、“変えるべきはまず自分から”だと気づき、部下への関わりを少しずつ変えていく努力をされました。
以前は、業務進捗に関するヒアリングや、二者選択を迫ることが多かった部下とのコミュニケーションを、次のように変えていきました。
まず、部下の方たちを集め、それまでは訓示のように一方的に話していたのをやめ、「ゴールを自分の言葉で表現すると?」と問いかけてみることにしました。最初は戸惑っていたメンバーも少しずつ発言するようになりました。
だんだんと他のメンバーの発言にうなずく人が出はじめ、「画期的な商品だと市場から評価され、株価が10%以上上昇すること」など具体的な目標が出てきました。
ひと通り落ち着いたところで、今度は「それを達成するために、“自分たちが”できることや、率先してやりたいことは?」と、Aさんは聞いてみました。
すると、これまでよく聞かれた“会社全体が”という第三者的な見方から、“自分は…していきたい”など、主体性を持った表現で語られるようになっていきました。
この様子に一番驚いたのはAさんでした。たった2つの問いかけをしただけで、方向性の共有やさまざまなアイディアが“自分事”として語られるようになったからです。
アカウンタビリティとは、周りがいくら指示や命令をしてもなかなか身に着くものではなく、“問いの共有”や“選択肢を増やす”問いかけをするほうが、よっぽどアカウンタビリティを高めるのに効果的なのかもしれません。
皆さんは、職場でどんな問いかけをしてみますか? それをきっかけに、対話が増えていくといいですね。
(次回は1月第4週号掲載)
〈プロフィル〉竹内 健(たけうち たけし)
エグゼクティブ・コーチ(COACH A USA 取締役 CFO)
PricewaterhouseCoopers LLPにて異例の日米5都市を異動しつつ、公認会計士として日米欧の企業や経営者へのサポートを行う中で、ソリューションの提供だけでなく対話を通じた人への投資があってはじめてクライアントのパフォーマンスが発揮されることを痛感し、これまた異例の会計士からの転身をはかり現職。
【ウェブ】www.coacha.com/usa/