〜遺伝子疾患の着床前診断方法:単一遺伝子疾患(Single Gene Disorders)の着床前診断(1)〜
単一遺伝子疾患家系では疾患を代々残してしまうリスクがある
前回2回は、ほぼ2年間かけて説明してきた、最新の性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断の総まとめをいたしました。今までは、体外受精を行う場合の23(XY)の染色体の基本である異数性を検査する着床前診断の臨床について話してきました。
今回からは、遺伝疾患を検査する単一遺伝子疾患の着床前診断についてどのように行うかを説明を開始します。
単一遺伝子疾患とは、特定の遺伝子に対して突然変異、もしくは変性することにより引き起こされる遺伝子の状態です。多くの単一遺伝子疾患は遺伝するものであり、単一遺伝子疾患の家系では代々に渡り疾患を残してしまうリスクを持っています。
現在、さくらライフセイブアソシエツがパートナーとして依頼している専門遺伝子検査場では、300ほどの遺伝性疾患の着床前診断が可能です。さくらライフセイブアソシエツが受精卵の生体検査である着床前診断のコンサルテーションを開始して、9年目になりましたが、今までに、日本人の患者様からの依頼で遺伝性疾患を検査する単一遺伝子検査の着床前診断コンサルテーションを行った疾患は、
・血友病AとB(HEMOPHILIA AとB ; F8, F9)
・筋緊張性ジストロフィー(DYSTROPHIA MYOTONICA 1 , DMPK)
・顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FACIOSCAPULOHUMERAL MUSCULAR DYSTROPHY 1A ; FSHMD1A, FRG1)
・レックリングハウゼン病:神経線維腫症1型(NEUROFIBROMATOSIS , TYPE I ; NF1)
・神経線維腫症2型(NEUROFIBROMATOSIS, TYPE II ; NF2)
・多発性内分泌腫瘍I型(MULTIPLE ENDOCRINE NEOPLASIA, MEN1)
・多発性内分泌腫瘍ⅡA型(MULTIPLE ENDOCRINE NEOPLASIA, TYPE IIA ; MEN2A)
・脊髄小脳性運動失調(SPINOCEREBELLAR ATAXIA ; SCA)
・マルファン症候群(MARFAN SYNDROME : MFS, FBN1)
・腎多嚢胞病1と2(POLYCYSTIC KIDNEY DISEASE 1 ; PKD1とPOLYCYSTIC KIDNEY DISEASE 2 ; PKD2)
・マシャド・ジョセフ病(MACHADO-JOSEPH DISEASE ; MJD, ATX3)
・膠原病5型(COLLAGEN, TYPE IV, ALPHA-5 ; COL4A5)
・ハンティングトン病(HUNTINGTON DESEASE ; HD)
・水頭症(HYDROCEPHALUS, X-LINKED ; L1CAM)
・ロイズディエス症(LOEYS-DIEZ SYNDROME ; LDS、TGFBR2)
・神経症、遺伝性感覚性自律神経性:タイプ1とタイプ3(NEUROPATHY, HEREDITARY SENSORY AND AUTONOMIC, TYPE I ; HSAN1, SPTLC1とTYPE3, HSA3, IKBKAP)などがあります。 (次回に続く)
(次回は2月第1週号に掲載)
〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/