紳士服の基礎的知識を身に付ける(1)
通勤時にオーバーコートが欠かせない季節となりました。昨今はビジネス用でも丈は短め、膝上が人気のようですが、より伝統的な膝丈のモノがありますとやはりより暖かく、安心です。冷気は地面から上がってきますので…。このような日の朝、通勤時にスキー用のニット帽や手袋をビジネスアタイアにそのまま合わせてしまっていませんか? 寒さをしのぐには格好なんぞ構ってられない、という向きもおありかと思いますが、少し話を聞いてください。
私たちは洋服、また服の基礎的知識、着方など基本について家庭や学校できちんと教わったことはまずありません。正しい知識を持って教えることができる人がなかなかいないのです。“自分の着たいものを着たいように着る。それが自分のスタイル”という方も少なからずおられるでしょう。その心意気は良いのですが、服飾とは洋の東西また男女を問わず、長い歴史の中で変化し、磨かれ、体系化され続けてきた慣習であり、そして文化なのですね。よって学問的な側面もあるわけです。従って、自分流(またはオレ流ですか・笑)に紳士服を着こなしたいということであればなおのこと、ぜひ基本的なルールを身に付けていただきたいのです。どのようなゲームであろうとも、ルールを知らないことには自分独自の作戦を立てて楽しむことなどできませんよね? 紳士服飾誌で流行は教えてもらえますが、着こなしや素材など、基本については必ずしも書かれていないことも多いのです。この街ニューヨーク、そしてアメリカで暮らされている皆さまは、ビジネススキルの一つという気持ちで紳士服についての基礎的知識を身に付けられることをお勧め致したく、何か私がお役に立てることがあれば幸いです。(次回に続きます)
(次回は1月31日号掲載)
〈プロフィル〉 ケン青木(けん・あおき) ニューヨークに21年在住。日系アパレルメーカーの米国法人代表取締役を経て、現在、注文服をベースにしたコンサルティングを行っている。日本にも年4回出張。