紳士服の基礎的知識を身に付ける(3)
比較的暖冬と言われておりましたが、やはり甘くなかったようですね(苦笑)。皆さまかなり厚着をされておられると思いますが、この時期に特にお勧めなのが“帽子”なのです。私ども洋服屋がお話する際、専門用語を連発致しますと、「どうも意味がよく分からない…」と言われますが、ここで私が意味している帽子とは、カジュアルなカテゴリーのニットキャップではなく、ツバが帽子の周囲全体にあります、いわゆる“フェルトハット”の類なのです。この種類のハットには、ビジネスカテゴリーに属するモノもあれば、スポーツカテゴリーで、撥水(はっすい)加工などもされ、丈夫で雨雪をものともしないものもあるのです。冬のマンハッタンでそのような帽子を被られている男性が多いことに日本から来られたばかりの方は驚かれているかもしれません。確かに日本では男性の帽子姿は少なくなっているのかもしれませんね…。
人間の体で最も熱を発するのは頭部だそうです。次に首。つまりこうした部分、頭は帽子で、首回りはマフラー、またはスカーフなどでしっかりと覆いますと、コート1枚分の暖かさに匹敵するとさえいわれております。被る際の注意点といたしましては、帽子本体についているリボンは結び目が必ず左側となるように被ること。この約束事は婦人物でも同じです。結び目が逆の右側になりますと、前後逆にカブっていることになりますが、これはベースボールキャップを逆さにカブるよりもマズい事態ですので、ご注意ください。そして少々慣れてきましたら、ツバをやや前に下げてみたり、斜めにしてみたり、鏡を見ながらご自分のお好みで被り具合を調整されてみてください。さらにトップ部分のフェルトの窪みのつけ方も実は見せどころなのですが、これは蒸気を使いながらの作業となりますので、お買い上げの店舗にご相談されるなり、私の方にご相談されるなり、ご遠慮なくリクエストされてください。被り慣れると手放せなくなりますよ。(笑)(次回は2月28日号掲載)
〈プロフィル〉 ケン青木(けん・あおき) ニューヨークに21年在住。日系アパレルメーカーの米国法人代表取締役を経て、現在、注文服をベースにしたコンサルティングを行っている。日本にも年4回出張。